すれ違いたくない男

裁判No.4
事件:公然わいせつ 概要)陰茎露出
被告人:30代後半の男性
傍聴席:2人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


どうも皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


大学では文芸学部だったので法律に触れることなんてなかったんですけど、一応こういうブログをやってるんでね、法学部の友達からこんなものもらってるんですよ。

mini六法ってやつね。
ちなみに、右にある小汚いノートは僕が傍聴の際に使ってるノートです。
このノートも5冊目に入りました。
んで、なにが言いたいかというと、今回の事件「公然わいせつ」って線引きがよくわからないんですよ。
つまり、明らかにダメなのはわかるけど、何がよくて何が悪いのか、どこからが“わいせつ”となるのかが不明瞭じゃないですか。
そんなわけで調べてみました。

第174条〔公然わいせつ〕
公然とわいせつな行為をした者は、六月以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。(mini六法2005(平成17)年版、2005年2月8日、自由国民社


……結局、よくわかりませんね。
電車内で大声で猥談しているバカどもは、公然わいせつにあたらないのかなという疑問から調べてみました。
Wikipediaで調べたほうが、結構まともな記事があったんで興味がある方はコチラからどうぞ。
とりあえず、言動はならないのかな。
だって、裁判の場では、事件のあらましを説明するために、時によっては具体的に被告人がどんなエッチぃことをしたか真面目そうな女検察官が朗読することもあるもんね。
僕にとっては、充分刺激的です。
まぁいいか、そんな四方山話は。


被告人は30代の男性。
3年前までは普通の会社員でしたが、会社を辞めてからは実家に住みながらアルバイトで生活しているとのこと。
今回、被告人が何をしちゃったかは、検察官が訴状を朗読してくれます。

事件日、高校二年生である被害者の女性は、塾の帰り道。
夜10時過ぎで、周りにはあまり人もいません。
一車線道路の赤信号につかまってしまった被害者は、友人にメールを打とうと携帯電話を取り出します。
ふと顔を上げると、道路の反対側で同じく信号待ちをしている被告人が目に入りました。
被告人と被害者は顔見知りではないのですが、被告人は被害者に気づくと手を振り始めました
あれ?知ってる人なのかなと注意深く見ますが、やっぱり知らない人です。
すると被告人は、左手の人差し指を立てて、下の方を指差しました
被害者は自分の足許に何か落ちているのかと思い、下を見ましたが何もありません。
しかし、なおも執拗に下を指し続けているので、被告人から徐々に視線を落とすと




ズボンから陰茎が露出していました


いわゆる男性器です。
しかも、いわゆる勃起状態
全く、30代にもなって……。
いやむしろ、30代だからやるのかな?
10代とかで、この域に達していたらそれはそれは……ここは掘り下げなくていいか。

驚いた被害者は悲鳴を上げます。
すると被告人は走って逃げ出しますが、被害者の悲鳴を聞いて集まった周りの人が被告人を捕まえたという話なんですね。


以上の起訴状が検察官から読まれまして、罪状認否を行います。
罪状認否とは、被告人が起訴状について認めるか、否認するか、これは認めるがこれはやってないとか言う一部否認かの意思を確認する作業です。

裁「では被告人にお尋ねします。今、検察官が読み上げた起訴状について、何か間違っている点や付け足したいことはありますか?」
被「はい、下半身を露出したことは認めますが、手を振ったり、下を指差すなどのことはしておりません

一部否認です。
つまり、出すには出していたが、被害者の注意をひくようなことはしていない。


ただ、出してただけ


という主張ですね。
どっちだっていいよ
そりゃあね、わかりますよ。
注目を集めて見せつけるほうが、より悪質っていうのはわかります。


でもね、目の前に女子高生がいました。
陰茎を露出しました。
しかも勃起しています。
これを悪質と呼ばずして何と呼ぶ。
でも、被告人が争う姿勢を見せている以上、争点は事故か故意か、見せる気があったのかないのかに絞られました。

弁「今回、陰茎を露出してしまったというのは間違いないね?」
被「はい、間違いありません」
弁「どうして、そんなことしちゃったのかな?」
被「仕事も見つからずストレスがたまっていました」
弁「ストレスがたまっていたって言ったって、そんなのは理由にならないよね」
被「はい……」
弁「ストレスがたまるといつもやっちゃうわけ?」
被「いつもというわけではありませんが、やるときもありました」
弁「何でそんなことしちゃうの?」
被「何か開放的な気分になって、気が晴れるというか……なんかスゥーとするんです」


それはただ単に、開いたチャックから風が入ってるだけでは?
下半身だけ開放的な気分になって満足なのでしょうか。
この人の場合は、むしろ頭に新鮮な空気を入れたほうがいいです。

弁「今回みたいに、人前で出したことはあるの?」
被「ありません」
弁「じゃあ、今回はなんで人前で出しちゃったの?」
被「人前で出したというよりは、出してたらそこにたまたま人がいたという形でして……」
弁「勃起状態にあったそうだけど」
被「そんなことは、絶対にありません」


たぶんこの人、あまり反省してないんですよ。
後で一応謝ってはいるんですけど、出しちゃってごめんなさいというより、出した場にたまたまいた被害者の悪運ご愁傷様です、ってニュアンスなんですよ。
さて、検察のターン。

検「あなたさっきね、人前で露出したのは今回が初めてとか言ってたけど、それ本当?」
被「はい」
検「いつか、こういった事件につながるとは思っていなかったの?」
被「いつもは周りに注意しているので」
検「じゃあ、今回は周りを注意していなかったの?」
被「露出した当初は周りに誰もいませんでしたし、急に被害者が現れたんで、こっちも驚きました
検「そうは言っても夜だよ。現場は、そこまで見通しがいい場所でもないし、あなたの注意力が散漫だったのではないんですか?」


注意力マックスでも出していいわけじゃないけどね、と思いつつ。
それにしても、言うに事欠いて「急に現れた」とは……まさか被害者ぶる気ではなかろうな。
じゃあなんですか、世の女子高生たちは、夜の人気のないところを移動するときは、「露出狂さ〜ん、今近づいているから、そろそろしまってくださ〜い」とか言わなきゃいけないんですか。

検「あなたは、被害者を見つけてからどうしましたか?」
被「これはいけないと思って、必死にズボンの中に入れました
検「この部分で、被害者と意見が食い違ってますよね。被害者の方はあなたが手を振ってきたと言ってるんですけど」
被「それは、ありません」
検「では、被害者が誤った記憶をしていると?」
被「夜で暗かったし、必死にズボンを直しているのを見間違えてしまったのではないでしょうか


手を振るのとズボンを直すのを見間違える?
いや、さすがにそれはねぇだろ。
どこの世界に、「おーい、おーい」って人呼ぶ時に、下半身の前で手を振るやつがいるんだよ
見間違いにしちゃ、手の位置がおかしすぎるだろ。


仮にね、ズボンを必死で直したとしたら、被告人の主張では勃起状態でもなかったとか言ってるんだから、そんな悲鳴を上げるまでもないんじゃないかな。
関係ないですけどね、僕昨日家に帰ったら、ズボンのチャックが気付かず全開だったんですよ。
もちろん、僕の場合は勃起状態でも露出もしていませんでしたけど、最後にトイレに行った時間を考えるとおよそ2時間ほどは全開。
それを考えると、電車の中でクスクスと笑われることはあるとはいえ、悲鳴を上げられるという事態にまで進展するかな?

検「あなた、ごまかすのもいい加減にしなさいよ」
被「別に、ごまかしてなんていないですよ」
検「あなた、被害者が悲鳴を上げた後に逃げて周りの人に捕まえられてますよね。あなたそのときに、




まだ陰茎を露出したままで、


勃起状態だったんでしょ?


ちゃんとしまったんじゃないんですか。勃起状態ではなかったんじゃないんですか」
検「走っている途中で、出てしまいまして……」


さすがに、その論理は厳しいって。
やっぱり、見せたかったんでしょ?
やっぱり、勃起してたんでしょ?
もうね、こういった下らない嘘がバレるときってホントかっこ悪いよね。


ってかさ、夜の町を歩いていてさ、いきなり向こう側から全速力で走ってくる人がいるだけでもなんだか怖いのに、その男がすれ違いざまに勃起してたりとかさぁ、悲鳴を聞きつけた人がそいつを捕まえたはいいけど、そいつが勃起とかしてたらホント気が滅入ると思うんだけど。
裁判で被告人が反省の弁として「今回、被害者の方をはじめ、たくさんの方に迷惑をかけてしまい……」っていう定型文みたいのがあるんだけど、本当に今回はいろんな人にある意味で迷惑かけちゃったよね。

結局、裁判長も、夜で暗かったとはいえ被害者の記憶は詳細かつ矛盾点も見当たらないため、証拠として十分に採用し得るとして、被告人の“ただ出してた論”を一蹴。
懲役6月、執行猶予3年の刑が言い渡されました。


Wikipediaの記事の中で、「『表現の自由』とわいせつの関係」って言葉が面白かったんだけど、笑いのために全国放送で陰茎を露出した鶴瓶は公然わいせつにあたらないのかな?
勃起はしてなかったからいいのかな?
見せる気はあったと思うけど。