彼女を守るためにつく嘘とは?

裁判No.20
事件:「窃盗」 概要)万引き&不正売却
被告人:20代前半の男性
傍聴席:3人


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どうも皆さん、被告人に彼女がいたりする場合、罪は犯さなくても負けた気になる「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


証人尋問が行われる際、証人は法廷で宣誓書を読まされます。場所によって文面が違うみたいですけど、東京では、

宣誓
良心に従って真実を述べ、何事も隠さず
偽りを述べないことを誓います

ってな感じだったけな。えぇ、当然覚えていますけど何か?
そのあと、裁判長から偽りを述べない宣誓をしたんだから嘘をついちゃダメよと注意をされます。意図的に嘘をつくと偽証罪で罪に問われることがあります。
ちなみに、被告人はこのような宣誓はしませんし偽証罪の処罰もありません。罪を犯したとされている被告人が、偽証してでも罪を逃れようとするのは、ある意味当然のことと思われているからだそうです。とは言っても、なんでもかんでもとりあえず言えばいいってもんでもないです。

被告人は20代前半の男性。
被告人は、リサイクルショップっていえばいいのかなぁ、まぁそこでiPodを7台、時価約13万9千円相当を窃取した疑い

恐喝等前歴7件もある被告人は犯行を法廷で犯行を否認しました。

被「自分は盗っていないです。店にはいましたが」

正直、前歴7件もあれば、やったんじゃないの?と疑ってしまいますが、それじゃああんまりです。ただ、iPod1台ならごまかしもききそうですが、7台ですからねぇ、それほどの容疑であれば、相当な証拠があるはずです。それでも、無罪を主張する被告人。
検察官の調べによると、

被告人は事件日、車で女友達と遊んでいる際、1人で抜け出し被害店舗であるリサイクルショップに入ります。
被告人はカバンに入れてあったペンチ等工具を使い、iPodが入っていたショーケースを開け、iPod7台を窃取します。
翌日、同じリサイクルショップの別の店舗に行き、売却をしようとするのですが、盗まれた型番がチェーンの間の連絡で行きわたっており、売却しようとしたものが盗品だとばれ、その場で警察を呼ばれました。

ここまで聞くと、被告人に争える部分はなさそうです。
しかし、これは言ってしまえば検察官が証拠に基づいて考えたシナリオだったりします。被告人の主張は違います。被告人は、確かにiPodを売却しようとはしたけども、それは盗んだものではなく見ず知らずの氏名不詳者から譲り受けたものなのだと。
氏名不詳者。なんだか、メンドクサくなりそうな雰囲気がプンプンしてます。
警察官の取り調べに対しての供述は二転三転しています。

最初は後輩からもらった。
そのうち、氏名不詳者(コンビニの駐車場でバイクがうるさかったので、ものを言いにいった相手)からもらった。
最後には、20代後半〜30代前半の男性。身長は170〜175cmくらい。黒色のジャンパーは半分くらい開いていて、中にネズミ色のトレーナーを着ていた男からもらった。

もう最後の犯人像なんて、「氏名不詳者の教科書」って本があったら、真っ先に載ってるような特徴でしょ。トレーナーを着ていたって聞いて、まさかネズミ色ではあるまいな?と思ってたらホントにそうだったし。
そんなの、唐草模様の風呂敷被って泥棒する人くらいイメージで作られた人でしょ。



う〜ん、この二転三転する供述からも犯行を否認するのは説得力に欠けるってもんだよなぁ。やっぱり、その男の存在をなんとかして、証明しなくては。

弁「どうして、事件のあった日、バックの中には工具類が入っていたんですか?」
被「仕事で使うためのバックなので、常に入っているんです」
弁「どうして、そんな大きなバックを持って店内なんて入ったのか?」
被「彼女へのバレンタインのお返しを隠したかったんで」
弁「店内で、あなたが主張する氏名不詳者に声をかけられて、店の隅に連れられてバックにiPodを入れられたと。そうしたら、その男はどうしたの?」
被「男はここで待ってろと言い、どこかへ行きました。3〜5分くらい待っていたんですけど、怖くなって逃げました」
弁「その被害品のiPodだけど、彼女にはどうして盗ったなんて嘘をついたの?」

この男、被害品のiPodを売りにいくとき、何も知らない彼女にiPodを売りに行く旨を伝えたばかりか、そのiPodどうしたの?と聞かれ、盗ってきたと答えたとのこと。それについての質問です。

弁「その被害品のiPodだけど、彼女にはどうして盗ったなんて嘘をついたの?」
被「本当のことを知ると、彼女を巻き込むことになると思ったからです

なんねぇよ。黒ずくめの男に追われているコナンくんじゃないんだから。かっこいいっぽく言わないでください。
ってか、巻き込むことになると思ってて、それが嫌なら、売りに行くときに彼女連れて行ったらダメだし、チラつかせてんじゃねぇよ。
iPodをチラつかせてるのに、それには触れない。「なんかマジいらいらするわ〜」とか、ごちゃごちゃうるさいくせに、どうしたの?と聞くと、「いや言うほどのもんでもない」とか拒否る奴ばりに面倒ですね。
しかも、この答えに対しての弁護士の反応

弁「なるほど

なるほどじゃねぇよ。何を納得したんだ、何を!
弁護士だからって、過剰な演出はやめろって。

弁「どうして人に相談しなかったの?」
被「警察に相談して警察が動いたら、男が僕を探しに来ると思ったし、iPodを捨てたら男に会ってどうしたと聞かれたら困ると思って」
弁「じゃあ、なんで売ろうとしたの?」
被「男に会っても、売ったお金を渡せば、それが一番無難でいい方法だと思ったからです」

被告人が目一杯考えた無難な方法についてはスルーしま〜す。こんなのに、いちいち突っ込んでたらページが足りなくなりま〜す。

検「そのヤクザ者にiPodを入れられたとき、何か言われました?」
被「今から言うことを誰かに言ったら、ぶっとばすからな、と」
検「その、今から言うこととは?
被「覚えていません

ヤクザ者さん、ご安心を。ちゃんと言いつけどおり、被告人何も言いませんでしたから。

検「あなた、そのヤクザ者に名前とか言ったの?」
被「どこの者だ、と聞かれて地元名前生年月日を言いました」

なんで生年月日言うんだよ。聞かれたのかよ?
おっ、タメじゃ〜ん、みたいな漫才の序盤のジャブ的ネタにでも発展するのを期待したのでしょうか。

検「どうして、彼女と売りに行ったの?結局、巻き込んでんじゃん」
被「最初は一人で行くと言ったんですけど、ほかの女のとこに行くんじゃないの?勘ぐられまして……」

最後だけ、妙にリアルな被告人に同情。それでも、この人はやっぱり売りに行っちゃうんだよね。
まぁ、この人言わずもがな有罪判決が出たんですけど、本気で無罪勝ち取る気だったのかね。やたらめったら、怪しい人を主張すればいいってもんじゃないです。
でも、もし本当にこの氏名不詳者が存在したらびっくりしてるだろうな。住所・名前・生年月日まで聞いて、脅かして待ってろって言ったのに気付いたらいないし、しかも勝手に売ろうとしてたし
その点も考慮されてか、されるわけないけど懲役1年6月執行猶予4年が言い渡されました。