人の振り(犯罪)見て我が振り(犯罪)直せ

裁判No.29
事件:「恐喝未遂」 概要)難癖つけて金銭をとろうとする。
被告人:70代前半の男性
傍聴席:2人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


皆さん、いきなり嫌な過去をほじくることになるかもしれませんが、カツアゲにあったことあります?
僕はね、中学生のときだっけな、一度だけ絡まれちゃったことがあるんですよね。男3人くらいに対して僕1人。で、まぁ「おい、金出せや」と。
でねぇ、そのとき僕本当に1円も持ってなかったんですよ。それを口で説明し、ボディチェックされ、終いには「なんでもいいから、とにかく出せや」と。
とりあえず、そのときは持っていたガムをカツアゲされて解放されました。一度、やろうと決心したものの、それが不発に終わってしまった場合、なんか引っ込みつかなくなっちゃって、とりあえず何かは成し遂げようって気持ちはわからんでもないです。
まぁ別に、今日の話とはあんま関係ないんだけどね。


小学生のとき、給食のプリンならカツアゲしたことのある悪童「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


「恐喝」って罪名の裁判は、もちろん何度も見たことあるんだけど、今回みたいに「恐喝未遂」って罪名の裁判は初めて傍聴したかもしれないなぁ……。なんか、恐喝が未遂で終わるってのになんだか違和感を感じちゃってさ。
「おい、金出せや」って要求した時点で、恐喝罪成立じゃないのかね。とりあえず、久々に六法の出番でございます。



今回は私のペット、カピバラさんが六法を読んでくれました。そんな下らんことをやってる24歳児。

(恐喝)
第二四九条 人を恐喝して財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。(ポケット六法平成19年版 有斐閣 1443頁)

まぁ、物をゲットしたら、恐喝成立ってことなんでしょうね。ってか、恐喝ってなんぞやって調べてるのに、普通にその説明文の中で「人を恐喝して……」と恐喝って単語が入ってるのは不親切ではないっすかね。小学生のときに辞書で「上」って調べたら、「上のほう」って書いてあったときの怒りを思い出しました。


まぁ、いいやそんな話は。

被告人は70代の男性。
やったことはよくわかんないんですけど、ガス会社の人間に自宅のガスメーターを勝手にいじられ料金を騙し取られていると勘違いした被告人が、そのガス会社の人の家に行って、いろいろと金をふんだくってやろうとして、結局はとれなかったという事案。

どうやら、被告人は事件となったのは初めてですが、以前からこういった難癖はいろんな人につけていたとのこと。今回具体的にどんなことをしたかと言うと、

  • 「お前もこの辺りに住めなくしてやろうか」「詫び状を持ってこい」などと書かれた紙をポストに入れる。
  • 家に直接押しかけ、六法を開き、「お前のやったことは、有印私文書偽造って罪になるんだぞ。だから、この書類を買い取れ」と金を要求

「お前のやってることは恐喝って罪になるんだぞ」と被害者が突っ込んだかどうかは知りません。
う〜ん、それにしても70代にもなってなんて活発な人なんでしょう。


さて証人尋問。証人は被告人の奥さん。

弁「逮捕されたと聞いて、率直にどう思いました?」
証「ただただ、気が動転してしまって……」
弁「被告人はカッとなりやすい性格ですか?」
証「意外と冷静なところもあるんで、どうしてこんなことを……」
弁「被告人はどんな性格ですか?」
証「意外と思いやりのある人だと思います」

さっきから、“意外と”とか言ってるけどさぁ、ってことは基本は怒りやすい性格なんじゃないの?フォローしているようで実は、被告人の性格を静かにバラしています。

弁「事件後、家族で話し合いはしましたか?」
証「娘と一緒に、二度とこんなことを起こさないようにと」
それに対して検察官
検「事件について、何が起きたのかちゃんと理解していますか?」
証「旦那も詳しくは話してくれないので、正直今知ったような状態でして……
検「じゃあ、いったい家族で何を話し合ったと言うんですか!
証「そんなこと言われましても……(涙)」

う〜ん、泣いている人には申し訳ないけど、それはあなたが悪いって。何も知らないのに、対策を練ったつもりでも何の打開策も見出せてないよね。
散々っぱら時間を割いて会議やってんのに、「まぁ、とりあえず精いっぱい頑張るという方向で」ってな感じでいつも締めちゃうどこぞやの会議みたいだよ。どことは言わないよ。

検「被告人は、どうして今回のような事件を起こしたのですか?」
被「自らの正義感に従ってです
検「被告人は、以前も人の仲介役を引き受けたことがありますね?」
被「はい」
検「で、相手方に送った通告書の中に自分(被告人)にも5万払えと書いてあるんだけど、これはなに?」
被「いやぁ、よく覚えていないです」
検「以前、交通事故で亡くなった被害者の家族の代理を勝手に名乗って、事故当事者の家の近所に“人殺し”などと書いたビラを電信柱に大量に貼って、引っ越しをさせたということがありますね。これが、あなたの言う正義なのですか?」
被「そのときは、いいことと思っていました」

別にね、この人ヤクザ屋さんでも、その下部組織の人でもないらしいんだけどさ、やってることは完全にヤクザ屋さんと一緒だよね。完全に自営業。
で、この人が意味不明なのが、別に仲介役やっても多分マージンもらってるわけでもなさそうだし、なんでこんなことやってるのかが全くわかんないんだよね。60歳までは、クリーニング屋をやってたらしいから、格段法律に触れてきたわけでもないと思うんだけどね。
暇つぶし?老後の楽しみ?まぁ想像で勝手なこと言っちゃいかんか。
まぁでも一応さ、社会もなんも知らない中坊どもですら、カツアゲするときは基本路地裏でするんだからさ、70年も生きているんだからそんなあからさまな方法で人様から金を巻き上げようなんざ辞めて、のんびりと平和に余生を過ごしてほしいと思うけどね。