トランシーバーを使っての裁判

裁判No.41
事件:「窃盗」 概要)空き巣
    「住居侵入」 概要)だから空き巣だってば
被告人:30代前半の外国人男性
傍聴席:2人


裁判の中身が気になる方は、「続きを読む」からどうぞ。


いやぁ、もうだいぶ過ぎてますけど4月ですよ、4月。僕も社会人4年目傍聴生活は5年目を迎えることとなりました。う〜ん、時が過ぎるのは早い早い。
まぁ4月ということで新入社員も入ってきたんですけどね……ずっと僕の課には新人が来ないんで、ずっと僕は下っ端のままです。
年中、後輩欲しい後輩欲しいとか言ってるので、逆に嫌がらせで後輩の配属がないんじゃないのかと邪推すらしてしまいます。



「それは、ひょっとしてギャグで言ってるのか!?」いやいやマジで後輩欲しいから。そんな「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


なんで、こんな話から始めたかって言うとね、社会人に限った話じゃなくても同じ環境に4年もいればですよ、いい意味でも悪い意味でも慣れっていうのが出てきてしまうもの。
バイトとかでもいたでしょ、「そんなこと、やんなくてもいいんだよ」的なこと言う人。だいたい、起こりうることなんて想像できたりするから、分かったもん同士だとサボっちゃうみたいな。
とは言ってもよ、裁判でそれやっちゃダメじゃん。裁判官、検察官、弁護士はそりゃあ裁判は慣れているだろうよ。でも、ある意味メインの被告人だけは、裁判に慣れてなんていないわけだから、そこの人たちが慣れ合いでやられちゃ困る訳だ。
だからね、裁判官が被告人に対して黙秘権の説明をするくだりがあるんだけどね、黙秘権があるから、証言しようとしまいと自由だけど、喋った以上はそれはこの裁判では証拠になるよ、っていう。その説明を終えた裁判官に対して通訳が、

「今までのところ、訳したほうがいいですか?」

とか聞く奴は、大うつけ者じゃ!僕が先輩なら説教ですよ、説教。
当たり前だろうがよ。いちいち訳してくださいって言わなきゃなんねぇのかよ。
先生が授業中に関係ない話をしててさ、じゃあそろそろ授業やんべと思って「はい、みんな鉛筆出して〜」って言うと、「先生、シャーペンじゃダメですか?」とか聞く俺を苛立たせるのが上手だった同級生みたいだな。いちいち、そこまで言わせんでもいいだろうが。


裁判官もさ、そりゃあ当然だろみたいな返事すればいいのにさ、「ぜひ、お願いします」とか言っちゃってさ、甘やかすんじゃないよ。
しかも、最初に通訳が先制パンチで「訳すんですか?」ときたもんだから、それ以降、裁判官はもちろん、検察官、弁護士共に発言が終わると、「はい」とか言って自分が発言終わったことを通訳に宣言したりしてんの。
なんだそりゃ。
あんたら、トランシーバーで裁判やってんのか。「質問終わりました、どうぞ」みたいな。


なんかそういう意味じゃ、全体的に甘ちゃんが揃っちゃった裁判になったんですかね。検察官は、被告人に対してなんも質問しないしさ。
……あっ、この事件について書くの忘れてた。

被告人は30代前半の韓国人男性。
被告人は韓国人の共犯者(すでに懲役二年、執行猶予四年が確定)と共謀の上(被告人は誘われた)、マンションの1階の留守宅に窓ガラスを割って侵入し、現金や宝石類など計35万円相当を窃取
ただ、窓ガラスが割れた音を聞いた近所の人が110番通報をし、盗み終えて家から逃走しようとしていたところに、ちょうど駆け付けた警察官によって逮捕されました。

え〜っとですね、被告人と共犯者は韓国でも知りあい。しかも、母国でも何度か同じようなことをやっていたとのこと。
それについて、甘チャン弁護士のターン

(通訳に向けての、「はい」はカットします。メンドイから)
弁「えぇ〜っとね、韓国でも共犯者と何度か空き巣に入って、捕まってるよね。なんでこんなことしちゃうの?」
被「もちろん、悪いことだとはわかっていますが、お金がないこともありまして」
弁「お金がないって言ったってねぇ。でも、悪いことってわかってるんなら、もうやっちゃダメですよ

いやいや、悪いことってわかってんだか知らんけど、この人すでに何度かやってるから。そんな、ダメですよで済ませていいのかよ。

弁「ちなみに、日本に来たのはいつ?」
被「約4カ月前です」
弁「盗みで捕まったのは、日本では初めてだよね?」
被「はい、そうです」
弁「まぁ、韓国から慣れない土地に来てね、日本で頑張っていこうとしてたわけだ

この人なんか知らないけど、同情とはまた違う美談っぽくもっていこうとしてんの。弁護ってそういうことじゃねぇからな。それに、今のは問答として成り立ってねぇからな。
それに、たった4ヵ月で盗みに逃げてる訳だ、しかも母国の悪友と。そんなの、悪いことするために、来日したと思われても仕方ないじゃないか。
それなのに、最終弁論っていう最後に弁護士が裁判官に主張するときに、

「被告人の母国・韓国では盗みの前科があるものの、少なくとも日本ではまだ犯罪を犯しておらず……」

とか言っちゃってんの。当たり前だろ、まだ4ヵ月だぞ、4ヵ月。そんな短期間で、何を判断するっていうんだ。そんなの強制退国か、僕の会社のビルの地下の囚人収容施設でひたすら自転車漕いで、電気代の節約に役立たせりゃいいんだよ。最近、経費削減ってうるさいからさぁ。もちろん、うちの会社にはそんな自転車設備はないけれども。
それでさ、その最終弁論の中で、さらに

「逃走直後に捕まったことからも、事実的な損害は起きていないのであります」

とか言ってんだけど、窓ガラス割ってんだろうがよ!損害起きてんじゃん。その捕まってんだからいいでしょ?的なご都合主義はなんなんだよ。
通訳さん、訳さなくていいよ、こんな弁論。被告人に日本の裁判はぬるいとか思われたら嫌だし。


まぁいいさ。どうせ春だし、ほんわかした気分で裁判に挑んじゃったんでしょ?
いいよ、別に。俺だってほんわかした気分で仕事中に裁判所に行っちゃってるわけだしさ。