ピッコロ大魔王を世で放っておいた神様も十分重罪

裁判No.42
事件:「詐欺」 概要)レンタカーを借りパク
    「横領」 概要)上と一緒
被告人:60代前半の男性
傍聴席:1人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


大学のときに、体育会の部活やってた話はしたことあると思うけど……あるよね?まぁやってたんだよ。そんで、4年のときはキャプテンやってたんだけど……これは言ってないよね?まぁやってたんだよ。
そんでね……、いいやまず挨拶しよう。
営業先からは、体育会出身の引きこもりで名が通じている「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


でさ話戻すんだけど、キャプテンやってるとだな、練習を休むだなんだっていう連絡は俺のもとに来る訳だ。風邪引いただ、ケガしたとかね。
でね、しばらくすると、その休みの連絡を受けた時に、コイツ味占めてやがんなってのがわかるようになってくるんだな不思議と。単純に言うと、ちょいとしたサボり癖がつくやつがいるんだわ。休むことに対して抵抗が薄まるっていうか。
最初は本当にケガしたんだろうけど、おっ、これ使えるじゃんみたいな感じ。よくギャグで「あ、痛たたたた、急にお腹が」みたいなのあるじゃん。そんな感じ。そんなチームだったけど、実はそれなりに強かったのよ、いやマジで。


で、今のニュアンスなんとなくでも、伝わったかなぁ?
でね、裁判でも似たようなことに出会うことがあるのね。どういう時かっていうと、


心神耗弱が疑われているとき。
どういうことかというと、ものすごい凶悪な犯罪を犯した人がいるとする。で、マスコミからの情報だと、その犯人が理解しがたい荒唐無稽なことを言ってるとすんじゃん。そうしたら、多少は思う人が多いんじゃないかなぁ?


コイツ(嘘)盛ってやがんな」って。
実際はどうだか知んないよ。でも、心神耗弱が認められたら、日本の裁判においては減刑されるのが原則ですので、それ狙ってんじゃねぇのと勘ぐってしまうことはあるでしょ。
今日は、そんなような話。

被告人は60代の男性。
被告人は、レンタカーを24時間借りる契約をしたにも関わらず、期限になっても返さず、約50日間もの間乗り回していたというもの。事件当時、被告人は住居不定(ホームレス)。
被告人は、窃盗、公然わいせつなどの前科のほか、毒物及び劇薬取締法違反などの薬物系犯罪の前科もあり、精神的に不安定な状態が続いていたとのこと。
ちなみに、犯行の動機として、


神の声に基づいて行った
と供述しています。

さぁて、なんとも扱いにくい題材ですね。神の声ですか。
実は前のブログのときに、セロテープシステムズなる組織に精神を害されているという連続放火魔の話を書いたときがあるんだわ。ちなみに、そのときは心神耗弱が認められて減刑になったんだけど。
で、そのセロテープシステムの時は、結構細かいとこまで指示がはっきりとしてたんだわ。で、それに従ってたと。
もしよろしければ、そん時のをどうぞ→「傍聴No.39」(前編)(後編)
でも今回の場合はさ、レンタカー借りパクするのはまだしもさぁ、50日使い続けろとか言うかぁ?しかも神が。
ってか、あんたにとって神様って何よ?


幸せが授かる日本の神様事典 ~あなたを護り導く97柱の神々たち~

幸せが授かる日本の神様事典 ~あなたを護り導く97柱の神々たち~

この本の何ページに載ってる神様なのよ、ねぇ。ってか、こんな本あるんですね。
まぁ、その辺りは被告人に答えてもらいましょうか。

弁「どうしてレンタカーを返さなかったのですか?」
被「夜、寝るくらいの時間になると必ず、頭の中でいろいろな声がするんです
弁「どんな声なんですか?」
被「神様の声で、“レンタカー”と“あゆめ”と聞こえまして

もう、この二つの問答で言いたいことありますよね。住居不定者が夜になると必ず聞こえてくるという都合の良さ
それと、どんな声?に対する答えが神様の声でっていう、みんな知ってるでしょ?的な返答。病理が深いのか、よく練られているのか。

弁「いつから、そういう声が聞こえるようになったのですか?」
被「以前、三重の刑務所に服役中に、いじめを受けた際に精神的に不安になってからですかね……」
弁「精神的不安……」
被「私は、いじめを受けている際に改造されたのです。私と同じように声が聞こえる人は5000人くらいいると聞いています」

刑務所で、“いじめ”そして“改造”っていうと、なんか一つしか浮かばないんですが……。あっー!!的な。……不謹慎ですね、撤回します。
でさ、ここでも一つわかんないんだけど、精神的に不安になって、ここではあえて幻想と呼ばせてもらいますけど、幻想が見えるようになったという過程と結果はまだわかるんだよ。
でもさ自分で、精神的に不安になってから……って言うのは何か違うんじゃないかなぁって思うんだよなぁ。
「いじめを受けていました。そうしたら、いつの間にか聞こえるようになっていました」ならわかるの。でも、「精神的に不安になって聞こえるようになった」って自分で言うと……う〜ん長くなるから辞めとこう。結構、難しそうな問題だし。


そして、最後に検察官が僕も気になってた質問をしてくれて裁判は終わります。

検「神の声が聞こえて、犯行を行ったと」
被「はい」
検「それはいいんだけどね、その神の声に従わないとどうなるの?
被「神の声に従わないと……、神は私を導いてくれなくなり……
検「あなたねぇ……


あなたの言ってる神様ってのは、悪事にしか導いてないじゃないですか。
それで、あなたは報われているんですか?」

そうなのよ。
この神、悪い神なのよ。ドラゴンボールで言うならば、神様になるためにはじき出されたピッコロ大魔王なわけよ。
だって、悪事をやれって言ってんだもん。まぁ正確には“レンタカー”と“あゆめ”しか言ってないんだけど。
で、従っても一時的な住処を手に入れただけでしょ。従わなくて家が無いってのは、従わなかった報いじゃなくて住居不定者としてのスタートラインだからね。


つまり、神の声があろうと無かろうと知らんけど、まぁ頑張れってことなのよ。
ダメよ、別になんか嫌がらせ受けてる訳じゃないのに、人のせいにして罪犯しちゃ。
もしくは、もっとちゃんと詳細に練らなきゃ。