「成り行き」と「たまたま」は裁判ではNGワード
裁判No.56
事件:「強盗致死」 概要)強盗行為の最中に被害者を死なせる。
「逮捕監禁」 概要)金の在り処を突き止めるため監禁
被告人:50代後半の男性
傍聴席:25人
裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。
僕は大学時代法学部に通っていた訳ではないし、法律関係の仕事を目指していた訳ではなかったですけれども裁判にはまっていきました。
でも逆に法律関係の仕事を志す過程で裁判にはまってしまったら、その志は半ばで断念していたかもしれません。
最終的に量刑判断を下さなければならない裁判官、例え同情出来る理由があろうとも罪を犯した以上はそれに則り糾弾せねばならない検察官、そして
どんな下衆なことをしようとも弁護をしなければならない弁護士。
どの仕事も大変さというのは、想像を遥か超えているものなのではないでしょうか。
そうは言っても、漫画「弁護士のくず」はものすごく好きな「普通」です。
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今回は久方ぶりの裁判員裁判です。以前も裁判員裁判のことを記事にしましたので、もしよろしければそちらもどうぞ。→〔前回の裁判員裁判〕
では今回の裁判に移ります。
あと、初めてに言っておきますけど、今回の記事で笑うところとかはないと思うので、その点だけご了承のうえお読みください。
被告人は50代後半の男性。
被告人は知人と共謀の上で、風俗店経営の男性(当時65歳)を店舗の前で捕まえ、ガムテープで身動きをとれなくして車に拉致。
金品を強取しようと鍵を奪い、被害者宅から120万円と店舗の売上15万円を奪います。
金の在り処を吐かせようと暴行している最中、被害者を死亡させた疑い。
被害者が死亡後、被告人らは資材置き場に遺体を埋め、被害者が乗っていた車は解体業者に依頼し処分をしたとのこと。
あのぉ...想像以上に重い話で驚いてらっしゃる方もいると思うんですけど、僕もそれは同様でして...。
で、僕はなんの下準備もしないで傍聴席に座ったんですけど、新聞記者なんかも結構いて、あとあとニュースで調べたら、その近辺ではやはり大きく報道されていたようで。ちなみに事件発生は2005年で遺体が発見されたのはその四年後とのことです。
もう少し、事件そのものについて触れますか。
今回、被告人の兄貴分に当たる人が金銭トラブルになっていて、被告人も手伝うという形で加わったらしいんですね。ちなみに、その兄貴分は後日の裁判で無期懲役が確定したらしい。この被告人にはどんな刑が下ったのかは最後まで見なかったんでわからなかったんですけど、それなりの刑にはなったでしょう。
言い方はあれかもしれませんけど、135万円を強奪するために人を一人死なせて、そんで無期懲役の判決をもらうって本当にこんな馬鹿な話ってないと思います。そりゃあ135万円って言ったら大金ですけど、それで人生を棒に振っちゃしょうがねぇだろうよ。
しかもその135万円強奪のために、被害者の車に発信器をつけ、普段も毎日被害者の働く店の前で行動を監視し行動パターンを把握し隙を狙っていたとか。発信機って…。コナンでしか見たことねぇよ。
それによって、被害者は深夜に店を閉めた後一人で掃除をしてから家に帰ることがわかって、襲われるということになってしまったと。
検察官は今回の罪状を決めるにあたってのポイントなる部分をいくつか挙げてくれました。この辺りの丁寧さが裁判員裁判仕様。
- 人が亡くなったという結果が重大なものである。
- 深夜に一人のところを狙って監禁し、現金を強奪するなど犯行は残虐である。
- 事前に行動パターンを把握するなど計画的である。
- 動機は短絡的で被害者に何の落ち度もない。
- 遺体を埋めるなど犯行後の対応も悪質。
- 被告人には監禁罪での前科もあり、今後も再犯の可能性は非常に高い。
- 遺族の処罰感情は非常に強い。
まぁこんなところかな。どう今回の話、裁判っぽいでしょ?そりゃあ、こういう話だって書けますさ。
でも、ここからがある意味本題。冒頭にも少し書きましたけど、弁護士はこんな下衆な行為をした野郎でも弁護しなきゃいけないんですよ。
皆さんも記憶にあることでしょうよ。オウム真理教の麻原被告の弁護団がむやみやたらに無罪を主張したりだとか、山口県光市の母子殺害事件の弁護団が死刑が確実っぽいとなったら、二審までと異なって急に精神障害による刑事責任の無さを主張したりとか。
下衆な野郎の弁護をするために、本心かどうかは知りませんけどね、その弁護自体も十分下衆な行為に思えてしまう。今回もそんな感じです。
- 被告人は当初から強盗に賛同していたわけではなく、成り行きであった。当初は恐喝のつもりであった。
「成り行き」って言葉は裁判ではNGな可能性高いんですよね。なんか、事態を軽く見せる感じがするからなのかな。
ってか、当社は恐喝のつもりだったとは言っても、言葉でダメだったら暴力振るうつもりだったろうよ。
はい次。
- 現場にはいたが、暴行に直接は手を下しはしなかった。
見て見ぬフリですか。それで、いいと思ってるの?
直接手は下さないけど、暴行は見て見ぬフリ。でも悪いとは思ってるよって花沢類か!!
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はい次
- 死亡は予期せぬ出来事であった。拉致の際に目隠しをしたということが、顔を覚えられたくない、逃がすことが前提の行為だから。
へぇ〜そうですか〜、それはそれは〜って感じだな。ふ〜んとだけ言ってシカトしてやりたい。
そりゃあ殺意があるのと無いのとじゃ刑は違うのは分かるけどさ、65歳のじいさんに向かって大の大人が暴行かましたら死ぬかどうかはともかくとしてただじゃ済まないことくらい分かるだろうよ。
そして最後が傑作。ってか、ある意味じゃ駄作。
- 遺体を埋めに連れていく際、被告人は遺体を引きずったり落としたりすることなく丁重に取り扱った。
この弁護の主張すごいよね。「被告人は(丁重に)取り扱った」っていう主語と述語からは想像もできないようなヒドイことしてるよね。
丁重に扱かおうがなにしようが、遺体を埋めに行く動作の中じゃどうでもいいから。
大便を漏らしましたけれども、毅然とした態度で立っていましたみたいな。いやいや、その良しとしている動作は、本題の動作のフォローにもなんにもなってねぇからっていう。
まぁ悲しくなりますけど、やったことに対しての弁明がこんな陳腐なものでしかないので、なんて言うか言い訳がましいというか少なくとも遺族の心証は相当悪くなったでしょうね。
今回、こういった証拠の提示だけで結構時間が経ってしまったので被告人質問は見れなかったんです。だから、本人の口からどういうことが話されたかわからなくて。反省の弁は聞けたのかとかね。
ただ、殺意はなくとも悪意があって、被害者になんら落ち度がない場合は何をどう謝罪されようと僕が遺族だったら、絶対に許せないと思うけどな。