裁判傍聴人ならむしろ同情する

傍聴No.66
事件:常習累犯窃盗 概要)釘とかニスとか盗む
被告人:30代後半の女性
傍聴席:2人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


ドリアン助川の正義のラジオ!ジャンベルジャン!」って番組が昔あってね。これで年代丸わかりだと思うけど。多少わかりやすく言うなら、ニッポン放送福山雅治魂ラジの前身の番組だね。
深夜番組なんだけど、暗〜い雰囲気の番組でね。10年以上前の番組だから細かいところまでは覚えてないけど、中高生から電話で悩みを聞いていくんだけど、相談の内容も重いし、パーソナリティも基本的に聞き役に徹してるし、無駄に頑張れ!とか言わないし静かな番組だったからその相談の重みをリスナーも感じたりしててさ。
なんか音源無いかなと探していたら、ありました。僕、この話は伝聞では聞いてたんだけど初めて音で聞きまして、正直今半泣きです。心の準備が出来ている方のみ、再生を押してください。
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この話では無いんだけど今でも覚えてるのが、男子中学生が毎日お酒を飲んでいて、飲んでいないと自分が保てなくなる。アルコール中毒なのは明らか。止めたいんだけど、止められないって話。
どう答えていたか忘れたけど、止める意思はあるのに止められない。それは意志薄弱だと思う人もいるかもしれないし、確かにそうなのかもしれないけど、どうにもならない場合もあるのかもと思った話。


ついついラジオのことになると話が長くなる、朝の目覚ましはラジオ番組の「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


そういや、ラジオと裁判の関連性って意味では、ドラマ古畑任三郎桃井かおりが犯人だった回は、確か桃井がラジオパーソナリティだったよね。
この話は、今回のと全く関係ないんですけどね。

被告人は30代後半の女性。
被告人は旦那と一緒に買い物に来ていた近所のホームセンターで、釘、ニス、ドライバーなど約4,000円相当を窃取した疑い。
被告人は窃盗の前科が5犯

万引きの常習犯の話です。
店に入って万引き行為を行う人は、理由は異なれど食料品など自分の私利私欲を満たすケースが大半。常習犯となれば、その欲を満たすためなら盗っちゃえばいいやという意識が高い人が多くなり、本当に反省している人というのは回数に反比例するように減っているかと思われます
ってか正直、今回みたいに5回以上捕まってて、コイツ絶対反省してないじゃんと思わなかったことはまず無いです。


では、今回のケースはどうなのか。
まず、珍しいのが盗まれたのが釘とかニスで、被告人宅でそれらが急に必要になったという訳ではないということ。たまたま、ホームセンターに行ったので、それを盗ったとのこと。
被告人は過去の前科からカウンセリングなどにも通っているようですし、普段の買い物は被告人の娘など家族にお願いしているとのこと。一人での外出は極力避け、今回も旦那と出掛けただけのこと。
被告人は供述でも言ったそうです。



「私は窃盗癖なんです」

お金無い奴が言い訳に使う言葉でなく、本当にただ盗むという行為が癖なんです。

弁「あなた、今回で裁判を受けるの6回目ですよね。どうして、またやっちゃうんですか?」
被「...私ももちろんわかっているんです。ただ、お店の中で人が周りにいないのを確認してしまうと、気がつくと手が伸びてしまうんです...」
弁「反省していると言われても、こう何度も捕まっているんじゃ反省していると思われなくなってしまいますよ」
被「...はい、申し訳ございません...。次こそは、絶対にこういうことがないように...」
弁「ちゃんと反省して、絶対盗みを行わないという強い意志で生活していって下さいね

ダメだ、この弁護士じゃ、被告人の言葉を引き出せないよ。だって、弁護士自体が被告人が反省していることや、更生の意思があることを疑っちゃってるんだもん。
冒頭の話の流れからもわかるかもしれませんが、今回僕はかなり被告人寄り。それは、被告人がおしとやかな女性だからって訳でなく、次の裁判官からの質問を聞いてのこと。

裁「先ほどの弁護士からの質問の中で、次は行わないようにするとの話がありましたが、過去の裁判でも同じようなこと言っていますよね。定期的にカウンセリングにも通っているようですし、具体的にどう対策をとるおつもりですか?
被「.........わかりません」
裁「え?」


被「旦那や娘も最大限協力してくれています、これ以上迷惑はかけられません。私も可能な限りカウンセリングの先生のもとに通っています。外出もほとんどいたしておりません。
.........私はどうしたらいいのでしょうか?」


裁「……」
被「……」
裁「私は数多くの窃盗の罪を犯した被告人を見てきましたが、その中でもあなたは窃盗という行為に対してきちんと考え反省をしているというように感じることができました。その想いはどんなことがあっても忘れないようにしてください。
6度目の裁判にでも旦那様が傍聴席にいらっしゃるということは、そうあることではありません。このことからもあなたたちが家族で考えていることというがわかります。私はそれらを最大限解釈して判決を決めたいと思います」


ただでさえ日本は加害者の保護が激しいなんて言われてるのもあるしさ、キリがないから僕だって裁判で泣いている人を見ても同情はしないんだけどさ、この被告人と傍聴席の旦那さん二人で肩を震わせてるのを見てつい同情してしまった自分は、裁判傍聴人として甘いと見るべきか、そうでないと思うべきか。