大阪府豊中市の皆さんこんにちは

傍聴No.76
事件:道路交通法違反 概要)お酒呑んで、車を超スピードで運転
被告人:30代後半の男性
傍聴席:1人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


関西に転勤することを話すと、関西人はボケと突っ込みが激しいだ、会話の全てが漫才だとか言ってくる人が多いですが、住んでみてわかるのはそれは関東人の関西人に対するとんでもない偏見ですね。まぁたまに電車内でおばさんがうっせぇなと思うことがあるくらいでいたって会話の内容なんてのは東京となんら変わりません。
とは言っても、そりゃあたまには漫才みたいな出来事にも出会いますよ。たまにはね。




綿密に作り込まれた漫才は大好きですが、作り込んでなくても面白い裁判はもっと好きですでお馴染みの「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。




前回の予告通り、今回は大阪地裁での話
目的の裁判が始まるまで時間があったので、法廷前のベンチで一休み。大阪地裁では各法廷前にベンチがあるのですが、全ての法廷で常に裁判が行われているわけではないためなのか、ベンチによっては寝っ転がってるオッサンもいました。


しばらくしたところでスーツを着た男女が僕の隣に座りました。あとでわかりますが、この男性が今回の被告人女性が弁護士です。

弁「それじゃあ、あと5分もすれば法廷が開きますからね」
被「あ、はい初めてなんで緊張しますね」
弁「皆さん初めては緊張しますよ。あ、そういえば○○さん本籍地はちゃんと言えますか?
被「本籍地ですか?」
弁「裁判で最初に聞かれますので

裁判の流れ上、最初に開廷の宣言があった後、起訴された人間と目の前に立っている人間が同一かを確かめる人定質問を行います。その質問内容は氏名、年齢、現住所、本籍地、職業です。
まぁ本籍地を答えられない人って結構いますんで、この辺りは適当ではあるんですけどね。

弁「本籍地分かります?」
被「いやいや分かりますよ、大阪府大阪市...」
弁「違いますよ、それは現住所でしょ。本籍地は大阪府豊中市です」
被「えぇ!?豊中!?そんなん初めて知りましたよ」
弁「じゃあ、なるべく裁判までに覚えてくださいね、大阪府豊中市...」
被「豊中言ったら、シゲミツさんとこかな〜...いやぁ全然思い当たりありませんわ」
弁「とりあえず覚えていただければいいですので。大阪府豊中市...」
被「...はいはい、なんとなく分かりました」
弁「あ、そうですか。じゃあ言ってもらってもいいですか?大阪府?」


被「大阪市...」
弁「だから豊中ですって!」


畜生、関西人め。法廷の外の完全に気持ちがオフのところで襲ってくるとはやるじゃないか。その後も必死に本籍地を覚える作業が続きます。

弁「まぁ完全に記憶してなくても問題ありませんので」
被「わかりました」
弁「で、あとですね、裁判長や検察官からいろいろと聞かれると思いますけど、スピードをオーバーしてしまった事実は認めますが意識してやったことではないってことをアピールするような答えをするよう心掛けてくださいね」

...いやいや、車乗る人間にスピード意識して走るなっていうの?メーター見ないで走っちゃったから許してちょ(テヘッ)が通じると思ってんのかよこの弁護士。たまにこういうの聞くと、それ以外の裁判でも人を信じられなくなるから嫌なんだよね。
そんなこんなで開廷。




神妙な面持ちで席に着く裁判官、検察官。まさか被告人が直前まで必死に本籍地を覚えようとしていたなんて考えると彼らの真面目な顔がむしろ滑稽に見えてしまい困ります。
そして、練習の成果を出す人定質問のお時間です。

裁「名前は?」
被「○○です」
…省略…
裁「本籍地はどこですか?
被「大阪府......」

またそこでつっかえるのかよ。豊中だよ豊中。そんなに行くとこじゃないけどさ、関西在住一月の俺だって豊中くらいスラリと言えるぞ。



被「大阪府......堺市...」

なんでだよ!ねぇ、なんでだよ!
事前の打ち合わせも含めて一度も堺なんて単語出なかったと思うんだが。ここで、ばれないようにではあるんだけど、弁護士のお姉ちゃんも軽く椅子でズルっとやってた辺りの反応はさすがと言ったところか。
裁判長はそれまでの過程なんてご存じじゃないので、普通に豊中市と修正してあげました。そしたら、そのあとスラスラ言えんでやんの。ふざけた感じじゃなかったんだけどなぁ...。




残り行数少なくなってきたけど事件の内容も軽く

被告人は30代の男性。
被告人は居酒屋で酒を飲んだ後、車で家に帰ろうとし(飲酒運転)、一般道で100km/h以上出して走行していた疑い

ちなみに裁判前に弁護士が言った言葉覚えてます?

弁「裁判長や検察官からいろいろと聞かれると思いますけど、スピードをオーバーしてしまった事実は認めますが意識してやったことではないってことをアピールするような答えをするよう心掛けてくださいね」


本籍地は記憶できなかった被告人ですが、弁護士からのこの言葉はしっかりと覚えていました。

検「あなた、今さらだけど一般の道で100km/hを超えて走っていいわけないことくらい知ってますよね?どうしてそんなことしちゃったんですか?」
被「その...スピートを超えて走ってしまったことはもちろん事実として認めるんですが、意識してそういうスピードを出してしまったわけではないと言いますか...」
検「あなた速度超過を意識してなかった、自然と出てしまったということですけど、その日、ビールを5杯、日本酒を4号も飲んでますね。
スピード云々の前に、運転の意識すら飛んでたんじゃないですか?
被「...えぇまぁ

こいつ何言っちゃってんだよ。「えぇまぁ」じゃねぇよ。
余計な弁解しちゃったせいで、どんどん墓穴掘っちまってんじゃねぇか。ちゃんと反省して一から裁判やり直してくれよ。
ってかこうして文章にして書くとしょうもないオッサンってことで済むんだけど、夜道で意識が飛んでるかもしれん奴が運転する車が100km/hで走ってるとか考えてみ。信号だって守れるかわかんないしさ。今回はスピード違反だけでけが人とかいなかったのがせめてもの救い。


検察もさ、刑罰をもって被告人を更生しようとするから罪の意識無さを立証して刑罰を重くする努力をしてもいいんだけどさ、さらなる事故につながる危険性もあったということをきちんとわからせなきゃ真に更生なんてできやしないと思うんだよなぁ。