子曰く「喉が乾いたら福井に行け」

裁判No.32
事件:窃盗 概要)車の窃盗とコンビニで万引き。
被告人:30代前半の男性
傍聴席:1人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


人ってパニックになると、何をするか、自分で何を言ってるかわからなくなるじゃないっすか。
彼女が別に男がいることを知って何を血迷ったか彼女に電話をして「それでも好きだ!」とか言ってた僕の友人とか、せっかくカーテンの中に隠れてバレてないのにパニックメーターが上昇して敵の前に飛び出しちゃうクロックタワー3のアリッサとか。

CLOCK TOWER 3

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もちろん、そのパニックを起こした結果、犯罪につながり裁判にかけられるということもあります。ただ、怒りに我を忘れ、人を傷つけてしまった。これは、良い悪いは別としても、頭の中だけでは理解できなくもないところ。
しかし、本当に「なんでそうなるの?」と思うような、事件もあるのです。


というわけで、人にドッキリを仕掛けるのは好きなくせに、人からドッキリを仕込まれると異様なまでに怒る「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


今回の盗みの対象は車。
車泥棒の場合、自分の足とするために盗む人が多いです。かっこいいからと盗む人はあまり聞いたことがありません。
では、どうして被告人は足代わりとして車が必要になったのかが今回のポイントとなります。

被告人は30代の男性。
被告人は、名古屋で寮に住み込みながら仕事をしていましたが、会社内の人間関係に悩み、会社の車を盗んで逃走したというもの。

被告人はいわゆる、イジメにあっていたんです。

弁「職場の雰囲気が悪くて、夜寝静まっている間に車を盗んで飛び出したってことだけど、そんなに雰囲気は悪かったんですか?」
被「上下関係が厳しく、上に背けば殴る蹴る、無視されるなんかは当たり前で、お金を盗られることさえ……」
弁「でも、あなたも大人なんだから、もっと上の上司に相談するとか、なにかしらの方法は考えられたんじゃないですか?」
被「上に相談すると、その後にさらに風当たりが強くなるんじゃないかと心配して……」

それが本当なら、とんでもない職場です。高校の部活だったら、1年間は対外試合禁止処分を食らうでしょうね。
さて、逃げたはいいけど、そこからどうするかが問題になってきます。
この人はとりあえず遠くへということで、東京に逃げることにします。名古屋から東京、距離にすると300km以上はあるでしょうね。逃げる逃げる。途中、浜名湖と海老名のサービスエリアで休憩でもしたのかな、これは妄想ね。
さて、東京まで逃げるのは別にいいんですけど、この被告人




無免許でした。
免許とってないんですよ。仕事でね、軽く運転させられることはあったらしいんだけど、高速は初めて。そんな人が、名古屋→東京300km走破。裁判所を見るために、JR伊東線&伊豆急行線を走破した僕なんかと比べていいレベルじゃありません。
この人がすごいのは、それだけじゃありません。

弁「まぁ、東京まで行こうっていうのはわかりましたよ。でもね、あなたその前に福井県に寄ってますよね。その福井県コンビニでペットボトル飲料を万引きしていますよね。これは何故ですか?」
被「お金をあまり使いたくなかったのと、運転の疲れで喉がかわいてしまったので……」
弁「そうじゃなくて、どうして福井県に行ったのかということですよ」
被「……それは、特に意味はないです
弁「意味もなく、福井に行ったんですか?」
被「…………」

ちょっと皆さん、地理の知識を総動員させてください。地理の知識に不安がある方は、本棚の奥から、地図帳を引っ張って来て下さいね。
はい、今あなたは愛知県は名古屋市にいます。いいですか〜、ついてきてくださいよ。で、そこからあなたは東京に向かいます。東京、わかりますね。しかし、まずは北上して福井へ向かってください。福井の位置わかりますか〜?


……おかしいでしょ、どう考えても。どうしても、ここに空白の1日が存在するんですよ。それにね、福井県民の方々すみません、福井って何の意味もなく行く県じゃないと思うんだけど。
妻を殺してから、自首するまでの間の1日に何をしてたのかと聞かれても何も答えない寺尾聡みたいな感じですよ。

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↑まぁそんなにお勧めはしないけどね。
それはともかく、でもこの人、本当に意味もなく福井に行ったっぽいんだよね。まぁ解せないことには変わりないんですが。

検「あなた、まずね福井に向かったようだけど道はわかっていたの?」
被「行ったことはなかったですけど、なんとなくはわかっていました」
検「でも、途中で山を越えたりもするよね。そんな慣れない運転で怖くなかったの?」
被「厳しかったら止めようと思ったんですけど、そうでもなかったんで」
検「東京へ行くのは高速だったんでしょ?初めての高速で怖くなかったんですか?」
被「確かに、最初は抵抗ありましたけど、もうどうにでもなれと思ったらなんとかなりました」


検「あなたね、さっきイジメを断る勇気とかないとか言ってましたけど、充分、勇気あるじゃないですか。
その勇気を今後、間違った方向に使わないようにしてください。

そうだよね。何に頑張ってるんだと。
人間、死ぬ気になれば何でもできるとか言う人いるけど、もし本当に死ぬ気でやるんだったらその力の方向を間違えちゃ何の意味も持たないのにね。