面白い裁判ここにあります(1)

裁判No.33
事件:公用文書等毀棄罪 概要)取調べ調書を損壊(たぶん)
    業務上過失傷害 概要)不明
被告人:50代後半の男性
傍聴席:3人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


いやぁ、さっきの地震結構大きかったなぁ……。皆さん、気をつけてくださいね。まぁそれはそれとして。
それにしても、今回はタイトルつけるのすごく迷ったなぁ。タイトルに(1)って書いたので、(2)(3)と続くからさぁ今回の印象だけでタイトルつけられないし……とかいろいろ考えたけど、むしろひねりもなんも無い最悪なタイトルに。
でも間違ってないですから。僕がここ2年で傍聴した裁判の中で間違いなく一番面白い裁判だと思いますもん。勘違いしないで下さいよ、かと言って面白い傍聴記になるとは限りませんからね。と、保険をかけたところで。


これ、意外と思われることが多いんですけど、裁判をやっている間というのは法廷の出入りは自由なんですよ。まぁ、あんまり出たり入ったりすると裁判を行っている人の気を紛らわすことにもなりかねないので、できるだけ静かに行うべき行為だとは思いますが。
先日、日本で初めての裁判員による裁判が行われましたけど、あのように注目度が高かったりで傍聴券が配布されるような裁判の場合、全部が全部じゃないでしょうけど、東京地裁の場合だと裁判所の入り口だけでなく法廷の入り口でも荷物の検査を受けます。こういった裁判でも途中退席は可能ですけど、途中入場はできるのかなぁ……?ちょっとわからないや。まぁ興味があって傍聴券に並んだんだろうから、ちゃんと時間どおりに来いとは思いますけど。
とまぁ、そんな豆知識。どこの本にも載っているようなことですけどね。やっぱ法廷では、緊張した面持ちで身動き一つとってはいけないとお考えの方もいらっしゃるようなので。


そんな訳で、緊張した面持ちの必要は無いけれども、お前はもうちょい緊張した態度で裁判を傍聴しろでお馴染みの「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


そんな前置きをさせていただいた訳ですから当然、今回の裁判は、途中から見始めたわけでございまして。具体的にこの被告人がどういった容疑で裁判をかけられているかは正確には不明です。
ちなみに、法廷に入ったときは証人尋問の最中でした。

検「取調調書が大きく×の字ように破れていますけど、これはどうしてですか?」
証「被告人が大きな×の字を書こうとして、筆圧が強くて破れてしまったのだと思います」
検「では、故意に破ったわけではないと」
証「そう思います」

証人は被告人を取り調べた警察官。
今回の公用文書等毀棄罪というのは初めて見たんですけど、恐らく今回の起訴内容というのは「取調調書を破いた」という疑いがかけられているんでしょう。でもまぁ、証人自ら故意に破った訳ではないと思うと証言しているから、この罪は不成立になるのかな。
被告人としては、その調書は不当であるとして、×の字をつけたとのこと。


さて、証人尋問も終わったので続いて被告人質問かなと思ったところで、裁判を傍聴し始めてから初めてのことが起きました。
なんと被告人が


「私も質問します」
証人尋問を請求したのです。これは初めての経験。しかも、法律上は可能なんだそうです。しかし裁判長は乗り気でない様子。変に長引くのを嫌がっているのでしょうか。

裁「どうしてもやらなきゃいけないんですか?
被「でも権利はあるんですよね、弁護士さん?」
弁「えぇ……、確かに被告人が希望している以上は、質問の権利はあります」
裁「でも、話長くなるんだもんなぁ……、時間の問題だってあるし……」
被「でもね裁判長、私ここに証拠を持ってきているんですよ

ちなみに、この裁判は2回目だそうでして、被告人が話長いのは今に始まったことではない様子。
この被告人、法廷に入ったときから気付いてはいたんですけど、証人尋問中も自らの脇に置いた膨大な資料を椅子に広げ、尋問の様子を細かくメモに取り、何かあるとぶつくさと独り言を言っていたんですね。
よく言えば自分の裁判に対して、とても熱心。悪く言えば……、う〜ん悪く言えばですよ、面倒臭いオッサンという雰囲気。なるほど、確かに裁判長が尋問を嫌がるのもわかる気が……。
しかも「証拠を持っている」って……。そんなの裁判に持ち込まないで下さいよ。警察でやってくれ裁判で、いきなり証拠を持ち込んでいいのは、古畑任三郎のさんまが犯人の回だけです。「私、犯人を知っているんですよ」ってね。あれは神回だね。

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裁「はいはい、わかりました。じゃあ


客観的な質問であるならば許可します。自分の主張を行うような質問であれば、すぐに取り止めますので」

権利とはいえ、やさしいね裁判長。被告人も嬉しそう。
あ、そうそう一つ前段階と言っておかねばならないのが、ドラマとかの裁判シーンで質問するときに証言台の近くまで行って、証言台に片腕ついて質問する人とかいますけど、実際はいないですからね。多分、禁止とかはされていないと思うんですけど、みんな自らの場所で立ち上がって質問するだけです。
さて、尋問が許された被告人、いきなり被告人席から立ち上がり、右手にノートを持ってまさかと懸念はしていたものの、つかつかと証言台に座る証人のもとに歩み寄りだしました。
そのあまりにも一般の方が陥りやすい教科書的な姿は、唐草模様の風呂敷を被っている泥棒並に稀有な存在でした。


さて、私からもベタですが注意しておきましょう
被告人、先ほど裁判長もおっしゃっていたけど、自らの主張を盛り込んだような質問を絶〜〜っ対にしちゃダメだからね。客観的な質問に努めて、あなたの主観的な意見は絶〜〜っ対に盛り込まないようにね
さて、ダチョウ倶楽部の前におでんが運ばれてきたところで、被告人による証人尋問です。

被「では証人にお尋ねいたします。あなたは先ほどの検察官さんによる尋問の中で、被告人、つまりは私がですね、最初に取り調べを受けたとき、証人は私が免許証を提示しなかったと言いましたが、




それは、嘘です!!そうですね?


裁「はい、もう止めます
被「待って、ちょっと待って」
裁「だって、自己の主張は認めないって言ったでしょう」

こんなのコントだよ、コント。おかしくってしょうがなかったもん。
さて、被告人は無事に尋問を続けることができたのか。そして、この裁判は今後、どのような方向へ進んでいくのか。詳しくは、また後日。



「第2話」