【内容記述あり】映画「裁判長!ここは懲役4年でどうすか」

今日はTSUTAYAでたまたま見つけた

裁判長!ここは懲役4年でどうすか [DVD]

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この映画の感想を書いていこうと思います。
年に数本程度しか映画を観ない男が書いているというのを前提として見ていただければ幸いです。


多分に内容紹介も含みますので既にこの映画を見たという方、ネタバレしても構わんよという方のみ「続きを読む」からどうぞ。


裁判本のレビューはいくつかやってきましたが(止めてません、長期休養なだけです)、裁判映画をレビューするのは初めてです。冒頭でも紹介しましたが、今日はこの映画を紹介します。

裁判長!ここは懲役4年でどうすか [DVD]

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内容
法廷内で繰り広げられる赤裸々な人間模様を描いた北尾トロの原作を映画化したコメディドラマ。三流ライター・南波タモツは、美人映画プロデューサーから裁判映画の脚本を依頼される。“愛と感動の裁判映画”書くために、彼は裁判所を訪れるが…。

以前、このブログではこの原作の文庫もレビューしているんですけど【レビューはこちらから】

裁判長!ここは懲役4年でどうすか (文春文庫)

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まぁ出来るだけ余計な先入観を持たないようにというのだけ心掛けて見ました。原作は否定的だったからね。




まず、これが映画初主演となるバナナマンの設楽さん。この人が主演と聞いたときに




うわぁ、いそう!と思ったのが最初の印象。こんな奴裁判所にいる訳ねぇじゃんと思うようなイケメンに無理やりやらせる訳でもなく、非常にマッチした配役だと思ったので期待して見ることに。


裁判絡みの映画って、古くはこれは陪審員ですけど十二人の怒れる男だったり、

最近ではそれでもボクはやってないとかありますけど、
それでもボクはやってない スタンダード・エディション [DVD]

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一般人の裁判の傍聴に焦点を当てている映画ってのは初めてだと思うんですよね。その点では、類似作品がたくさん出ている本と違って、より裁判って思っているより簡単に出来るんだよ、裁判の雰囲気ってこんな感じだよという裁判傍聴のガイドライン的な部分が求められていると思うのね。
ただそういう点で考えるとこの映画は、初めて裁判傍聴するときのドタバタみたいのは軽く流して、裁判の雰囲気に関しては一般受けさせたいためなのか無駄に軽〜い感じで描いているんで、個人的には期待外れだったかなと。




まず、初めて裁判傍聴するときのドタバタというのはどういうことをいうのか。
裁判に関して、友人などからいろいろな質問を受けます。その中で多いものの一つに服装問題というのがあるんですよ。「どういう服装でいけばいいのか?スーツとか正装じゃなきゃダメなの?」
答えは「なんでもいい」です。法廷内では帽子は取れと言われますが、何を着てきても自由です。ただ、この映画ではこう描いています。

初めて裁判所に向かう南波(設楽さん)。服装はジーンズとシャツの上に軽くなんか羽織っているだけ
門をくぐって建物内に入ろうとするも、スーツを着用した人の流れの中で居心地の悪さを感じ


「やっぱ場違いだなぁ」とのセリフ。


いや全然場違いじゃないし。何故かこのシーンだけ意図的に私服姿の人間を一切画面に入れないんですよ。これじゃ私服で来ちゃダメみたいじゃないですか
このシーン、表現の仕方として逆だと思うんですよね。例えば、

初めての裁判所に向か南波。服装は無難にスーツを選択。
いざ裁判所に入ろうとするが、周りを見たら私服を着てる人ばっかりで「なんだよ、私服でいいんじゃねぇかよ」とぼやく

この方が、私服OKの表現としてはいいと思うんだけどなぁ。さっきも言ったけど私服でなんの問題もありませんし、全く場違いじゃありませんのでご安心を。




次に裁判所に入って開廷予定表を見ながら傍聴する裁判を決めるんだけど、初めての裁判で何を見たらいいんだろ?って疑問が沸くのは当然なんだけど、それと同じくらい「うわっ殺人じゃん!」とか「強制わいせつって痴漢とかかな」といったミーハー的思考が必ずあると思うんだよね。
だけどこの映画では、全然わかんないと頭悩ませているところで、僕が裁判傍聴をするきっかけとなった裁判ウォッチャーの阿曽山大噴火さんが出てきて

そろそろ代わってくれと南波から開廷予定表をぶんどるんだよね。そんな奴いねぇよ。そんで、開廷予定表のシーン終わり。
初めての裁判をどれにしようかなという迷いつつも興味を引かれる裁判を見つける描写が省かれてるから、その後に実際に傍聴に向かうんだけど、どうしてこの人がその裁判に決めたかという感情が理解できなくてすごいヤキモキした。






で、ここの阿曽山さんの描き方もそうだし、その後出会う傍聴マニアの人たちの描き方もそうなんだけど、裁判傍聴人というものを非常識な人間として描き過ぎ。同じ裁判傍聴人としてここは非常に不快でした。こんな奴らと一緒に思われたくない。
交通事故で亡くなった息子の遺影を抱いている母親の横「交通事故の裁判はお金も絡むし傍聴席に身内も大勢いたりして意外と盛り上がるんですよ」とか抜かしたり、死刑求刑されたのちにニヤニヤしながら死刑だ死刑だ言う奴なんている訳がない。




もうそれ以外にも突っ込むところが多いんだけど関連なんでもう一つだけ言わせてくれ。
冒頭にも書いた、「“愛と感動の裁判映画”を書くために…」っていう内容ってのは実際、全然重要でなくて、他人の人生なんだから別に関係ないという姿勢の傍聴マニア側と、そうは思い切れない主人公・南波の内面の対比が一応話全体で一貫のテーマだと思うんだわ。
まぁそう考えればね、まっとうな姿勢を保つ主人公と対比させるために傍聴マニア側を非常識に描くというのはわからないでもない。個人的には納得はできないけれども。


それで、最終的には主人公は他人の人生を高見の見物している訳ではないという立場をはっきりさせるのね。それでも結局は、傍聴マニア側は自分らのスタンスは崩さない
そこでラスト、

南波「(多少呆れながら)…ったくひでぇ人たちだなぁ」

と半笑いでセリフを言うのね。
ここで映画も終わってれば、俺は高見の見物している人じゃないよ、まぁでもそういう人たちがいるってのも分かるけどねと、傍聴人という立場の人にも僕が思うようなある程度の意義を残せたと思うんです。
しかし、そこから、

南波「(多少呆れながら)…ったくひでぇ人たちだなぁ」
オッサン「南波さんも、すっかり同類ですよ」


南波「…確かに


えぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!俺画面の前で思わず叫んじゃったもん。お前、高見の見物側じゃないって言ったじゃん!!
最終的に、裁判傍聴人には他人の人生を高見の見物しているだけのいわば「冷やかし」的な立場しか与えてくれないわけ?衝撃のラストだったわ。




そんな訳で否定的な気持ちで観ていたんだけど、そういう面持ちじゃなくてもさぁ雑な部分多いと思うんだけど、この映画。
そんなのエンタメ映画として見ればいいじゃんと思うかもしれないけど、原作が俺が嫌いながらも実際にあったことをそのまんま書いていることを売りにしているんだから、エンタメなんだからいいじゃんで受け入れろというのは間違っていると思う
その他、原作とは関係ない裁判以外のストーリーもこれといって裁判に絡んでくるわけでもないし、裁判映画としてもそうだけど一つの物語としてもだいぶイライラしながら見ちゃった。




まぁ僕は裁判を人よりは傍聴している身、そしてそれなりに自分の意見を持って見ているつもりなので原作からそうですけど、スタンスの違いで嫌ってしまっている部分は大きいと思う。
なので、皆さんこの映画を是非見ていただいて、各々裁判というものに対して個人の見解を持っていただきたいと思います。そういう意味で、裁判について考える機会ができるという意味で、




お薦めです
むしろ、これ映画館で他の人の反応も見ながら観たかったなぁ。笑いどころとかあったのかなぁ?