生まれ変わってから初めて罪を犯しちゃいました!テヘペロ

傍聴No.85
事件:占有離脱物横領 概要)放置自転車を盗む
被告人:50代前半の男性
傍聴席:4人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


実家住まいのときや、その後に家を出たときは駅まで15分くらいかかってたから自転車で行ってたんだけど、駅指定の駐輪場では後輪のカギをかけるだけだったのね。
でも、こっち来てまた駐輪場の契約をしてたときに、管理のおっちゃんから前輪もカギかけたほうがいいよって言われたんだわ。しかも自転車に付属させるタイプじゃなくて、輪っか型で柱とかにくっつけられるやつ。ガキ共が、色々とガチャガチャしたものもって深夜にカギ壊しに来るんだとさ。
そこまで分かってんなら、なんかしらの対策をしろよとも思うけど、まぁ盗られたくはないからね、黙って近くでカギを購入。その時、実はこの自転車屋とグルなんじゃねぇかと思ったり思わなかったり。


自転車といえば、神奈川の裁判所に自転車で行くって企画をやったことあるなぁと懐かしく思いながらも、絶対二度とやらねぇけどなと強く思っている「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。

被告人は50代の男性。
被告人は深夜、駅前に放置してあった自転車に勝手に乗り自分のものとしようとしたもの。
窃盗や住居侵入等での前科が7犯あって、前刑の執行猶予中の犯行

前回がさぁ、犯行の理由が理由になってなくてかなりイライラしたんだけど、今回もなかなかのハイレベルな被告人を用意いたしましたお客様。自転車窃盗って、それ自体がお金にならないからさ、99%が自分の足として使うためなんだよ。つまりは自分勝手な理由ってこと。
でもね、例えば「早く家に帰りたかった」ってのが犯行理由だとしたら、自分勝手ではあるけど、一応理由たり得ている内容だとは思うのね。ただ、この人の犯行理由ってのは驚いちゃったよね。



「妻の故郷にお金を送るため」

供述ではずっとこう言ってたんだとさ。
なに?ベルマーク集めてアフリカに学校を作りましょう的な話で、自転車集めてなんかしようとしてた訳?とか思ったら全然違くてさ。

ベルマークのひみつ

ベルマークのひみつ


被告人の奥さんってのがフィリピンの方でさ、その家族が貧しく暮らしているからお金を送りたいんだってさ。まぁそれはわかるさ。
で、どうしてそれが自転車を盗むということになるかというと、




ちゃんと職場に定刻通り着くために自転車が必要だったんだとさ。
つまり、故郷にお金を送ろう!しっかりお金を稼がなきゃならちゃんと時間どおりに職場に行かなきゃでも遠いしなぁ、自転車も持ってないし→(ピコーン)じゃあ盗っちまえばよくね!!ということだそうです。
この内容で、「妻の故郷にお金を送るため」って供述を一貫させるってどうよ。それお前の時間に対する取り組みの塩梅やんけと思ったのは俺だけでないはず。言い訳するのは別にいいんだけど、人に転嫁するような言い訳する奴は嫌いだからさ、すげぇ気になっちゃったんだけど。
しかもこの人、裁判でもその主張を曲げないんだよ

検「あなた今までね、今回のような自転車窃盗も含め、何度も窃盗罪で裁判を受けていますよね?どうして今回もやっちゃったの?」
被「今までは自分の私利私欲のためでした。しかし今回はあくまで、妻の故郷のためにやむを得ず行ってしまいました

ずっとこんな感じなのよ、この人。
とは言え弁護士にしても検察にしても、「まぁ理由はどうあれ執行猶予中の犯行だし実刑は免れんからどうでもいいけどね」的な雰囲気もあって、はいはいそういうことにしときましょうねというような流すような雰囲気すらあったんだよ。
でもね、このあと被告人からとんでもなく酷い発言が出て法廷の雰囲気はガラリと変わります。

検「でもあなた、今回は理由は違うかもしれないけど、過去に行った犯行と同じようなことしてるしね、しかも執行猶予中の犯行だからこれは実刑は免れませんよ」
被「いえ、私は前回の裁判で前までの行いは反省して生まれ変わったのです。なのであくまでも今回は、




初犯のときのような気持ちで行ったことであり、ぜひそれを前提に判決をしていただきたいと思います」

すげぇよな、この発言。今まで被害に遭われた方を前にしても、同じことが言えんのかね。ちなみに今までの犯罪での被害弁償は全然なされてないんだって、それなのに生まれ変わっちゃったんだとさ。
それにさ、生まれ変わるって言葉はよく裁判で使われるけど、それ今までの罪がチャラになるって意味じゃねぇから。そこから説明しなきゃダメなの、ねぇ。
もう検察官ブチギレ。もうそこから説教というか、罵倒にすら聞こえる言葉の嵐。ボクシングだったらとっくにタオル投げ込まれてるだろうけど、それをするであろう裁判長もかなり厳しい表情。こりゃかなり怒ってんな。
そして最後は、

検「あなたね、生まれ変わっただかなんだか知りませんけど、結局今までと同じく人のものを盗むという根柢の部分は何も変わっていないんですから、刑務所で反省すべきだと思いますけどね!!
質問終わります!!

もう最後のは質問でもなんでもねぇけどなと思いつつも、検察官による猛ラッシュは終了。
結局、被告人も反省してんだかしてないんだか、なんだか煮え切らないまま裁判も終了。結果は、懲役一年六月の実刑判決。そりゃあそうだ。




確かにさ、放置自転車問題ってのは大阪で問題になってて、たまにだけど放置されてる自転車を使ったのに何が悪いんだって逆ギレする奴とかもいるんだ。そりゃあそうかも知れないけど、それをお前が使っていい法なんか無いわけで。
自分のやったことに対しては反省もしないで、環境が悪いだ、人のせいにするってのは客観的に見て非常に愚かだと思うし、醜いし。
こうはなりたくないからちゃんとしなきゃ、と強く思えるのが裁判の一ついいとこだと俺は思ってるんだが、どうだろう。