食後の一杯>>>>>>>>犯罪への罪悪感

傍聴No.87
事件:詐欺 概要)ファミレスで食い逃げ
被告人:30代後半の男性
傍聴席:4人


裁判の中身が気になる方は「続きを読む」からどうぞ。


ラジオが昔から好きで、今でもちょくちょく聞いているのね。ツイッターではよく話題に出すんだけど、数多あるラジオのコーナーの中で断トツで「ミスチョイ」ってのが好きなのよ。これブログでも書いたことあるかな?たぶん無いと思うけど。
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人生において、色々と選択を迫られることがあると思うんだよ。例えば上司に怒られているときに、

  • 1.素直に謝る
  • 2.言い訳をする
  • 3.それはそうとお前もアノ仕事投げっぱなしだよね?と一か八か煽ってみる


で、それを選択した結果どうなったか、ほかの選択肢を選んでいたらどうだったかを考えるコーナーなのね。
もちろん、程度の違いはありますけど、裁判にも似たものを感じることがあります。




そんな訳で、上司から怒られたらとりあえず言い訳一辺倒っしょ!!でお馴染みの「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


裁判を多く見ていると、あんま良くないんだけど慣れちゃう部分ってあるからさ、事件の内容聞いても何も思わないときってのもあるんだけど、たまにそんな慣れを吹き飛ばすすごいのに当たることがあるんだよね。
それは事件の凶悪性とかじゃなくて、ただ単に意味が分からないっていう話。

被告人は30代後半の男性。
被告人は所持金823円しか持っていなかったにも関わらず、ファミリーレストランに行って3,500円ほどの飲食をして踏み倒そうとした疑い

まぁそんなに珍しくもない食い逃げの話ですよ。
事件が起こった経緯を説明しましょう。

被告人は窃盗、食い逃げなど前科5犯。今は母親の監視下のもと実家で自宅警備員を絶賛謳歌中。
事件の日、昼飯を食べようと被告人は一人でファミリーレストランへ。ランチメニューを注文した被告人ですが食後にコーヒーも飲みたい。しかし、ランチメニューだけなら735円で所持金823円内ですが、コーヒーを頼むとそれが900円に変わってしまいます
それを認識していたらしいのですが、何故かそこで被告人はコーヒーを頼んでしまいます

食い逃げ裁判にしては珍しいのは、一応お金を持っていてちゃんと金勘定もしていたという点。だいたいが、ハナかな踏み倒す気でいるから金勘定とかしないからね。
これがさっき言った意味分かんないって話。お金があったのに、それを超えるだけ頼んで足りませんでした〜っておかしいだろうがよ。
ここでねぇ、俺の想像だけど被告人にこんな選択肢が出てたと思うんだよ。

  • 1.お母さんに電話してお金を持ってきてもらおう
  • 2.「お金足りなかったって気づかなったんですよ〜」と店員にごねてみる
  • 3.金足りないなら100円も3000円も変わんなくね!?アホみたいに食ってやる。


もう皆さん予想してらっしゃると思いますけど、よりによってこの人3番を選択しやがったんですよね
食い逃げ犯ってのは、お金がないから無銭で食べようとしちゃうんじゃないの?お腹が空いちゃうからやむを得ずやっちゃうんじゃねぇの?なんていうか、この犯行対応一つとっても、前科がある被告人が全く反省していないのは明白
しかし証人として出廷した被告人のお母さんはお花畑っぷりを炸裂させます。

弁「何度か面会に行かれたと思いましたけど、被告人の様子はいかがでしたか?」
証「今まで、そんなこと無かったんですけど、今回は私に頭を下げて謝ったんです。なので反省しているのだと思います

え〜今まで謝りもしなかった奴を実家に置いておいたのかよ。すげぇなこの人と思っていたら、僕の認識が甘いことを知ることになります。

弁「でも、前回の裁判の時も謝っていたと仰っていたのでは?」
証「なら、前回も謝って今回も謝ったというだけのことだと思いますが?

何を言っているのこの人?あんたが、今まで謝ってないとか言ってたんだろうが。その、語尾に「なにか?」とつけても違和感ないような態度腹立ちますね〜。
別にさ、子どもの犯罪が親のせいだとか言いたくないけど、30代後半で仕事もさせず家に住ませて、同じような罪を何度も重ねちゃって、ロクに反省させることもできない。これはね、全く責任がないとは言い切れませんよ。
まぁキャラとしての雰囲気は、映画「告白」の木村佳乃よ。

もちろん、こんな別嬪さんじゃないけど。


まぁいいや母ちゃんのことは。被告人だ、被告人。
ただねぇ被告人質問は、なんとも普通な感じだったんだよね。まぁ一つの焦点である「なんで3,000円もオーバーして食ったのか」という点については、30代で実家暮らしで親に申し訳ない気持ちもありたくさん食事をする気にはなれなかったので、とまぁ乗り切れなくもないかなという言い訳。それもこれもあなたがちゃんと働かないからだけどね。
ただ一つ、一見すると普通の裁判の風景なんだけどこの裁判ではより輝いていた場面がありましたので最後に紹介しましょう。

検「あなたが所持金を確認したのはいつですか?」
被「最初のメニューが席に来たときです」
検「そのとき自分の所持金ではコーヒーを頼めなかったのを確認した訳ですよね」
被「...はい」
検「じゃあ、どうしてお金足りなくなるのが分かっててコーヒーを頼んじゃったんですか?」
被「...心の弱さだと思います」

「心の弱さ」
これ、裁判で反省を示すときによく使われるフレーズなのね。まぁ抽象的すぎて、単になんも考えていないときの表れでもあるんだけど。
「なんで、人のもの盗っちゃうの?」→「心の弱さだと思います」
「なんで、ダメだってわかってて痴漢しちゃうの?」→「心の弱さだと思います」
こう実例を出すと、いかにこの言い訳がなんか適当なこと言ってるなってのがわかると思うのね。でもさ、今回の

なんでコーヒー頼んじゃったの?

心の弱さだと思います

これには俺も思わず「ホントその通りだな!」とガッテンボタンを押したい衝動に。金無いのに、コーヒー飲みたい欲望に駆られるなんて、そしてそれに負けるってこれぞまさに「心の弱さ」だよな。
あぁこういうときに使うんだ、と長年の疑問が解消された瞬間でした。
めでたしめでたし。