それでも盗っちゃう男

裁判No.9
事件:窃盗 概要)窃チャ等
被告人:30代前半の男性
傍聴席:1人


裁判の中身は「続きを読む」からどうぞ。


どうも皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは「普通」です。
今回もはりきって参りましょう。


前回の終りに次は松戸地裁の裁判を挙げると言ったんですけど、実はね、今回の裁判2年前のものなんですよ。寝かし過ぎ。
でもね、今でもノートを見ると、結構のその裁判の雰囲気とか思い出すものなのね。
でも不思議なものでね、裁判を傍聴していたときの感情と、記事を書き終えた後だと、今回は感想が全く違うんだよね
文字文化ってのは、難しいものだと改めて実感……。

被告人は30代の男性。
被告人は午前10時、松戸市で自転車1台(時価500円相当)を窃取
それと、同時刻帯に松戸市アパートの1階のベランダに干してあったYシャツ2枚(時価3,200円相当)、ハンガー2つを窃取した疑い。
被告人は住所不定の無職、まぁいわゆるホームレス生活をしていました。

とまぁ、こんな話。
検察官による起訴状の朗読の時点で、すでに突っ込むとこありますねぇ。
時価って、そもそも何よ?って疑問にぶち当たりません?そんなの常識だろ?って思っている方がいたらごめんなさいね、ホントに僕わかんないんです。
僕の勝手な解釈でいうなら、「その時点での商品価値」ってな認識をしてたんですね。
干してあったYシャツ2枚、つまりは着古しているものが3,200円というのは納得できるんです。
ただ、自転車500円は無くね!?
これね、傍聴席に僕一人で本当によかったですよ。だって、被害者の人が傍聴していたら、「え?俺の自転車そんな価値なの?」って思わないわけないから、窃盗による被害と裁判での冷酷な事実の突き付けでダブルショックを受けちゃいますよ。
時価って、そもそも誰が判断するんでしょうね?詳しくご存じの方のご連絡お待ちしております。
それにしても、被告人としたらYシャツだけを盗りたかったんでしょうけど、罪状としてはハンガーの窃盗までついてしまうのはなんとも。
恐らく確信犯的な被告人ではありますけど、そこにはビックリしたんじゃないんでしょうか。
もはやハンガーには、時価がつけられていませんでした。


裁判の流れの話をすると、検察官は被告人が行ったことなどや身上経歴などを「証拠」として裁判所に提出することを申請します。
弁護士によって、それが証拠として相応しいとされれば、裁判において取調べが行われるようになります。
証拠として認定されると、検察官は簡単に証拠の趣旨を説明します。
その中での一幕。

検「甲○号証ですが、被害品の写真撮影報告書であります。被告人に写真を示します」
(検察官、被告人の元へ行き証拠の写真を見せる。弁護士も被告人の近くへ行き、一緒に見る)
検「これは、あなたが盗んだYシャツですか?」(ここは、被告人質問とはまた別)
被「はい、そうです」
検「これは、あなたが盗んだハンガーですか?
被「……ちょっと、わかりません」
検「あなたが、盗ったものじゃないんですか!?

そりゃ、わかんねぇって
だって、絶対被告人、ハンガー欲しくなかったもん。
このブログには掲載していないんですけど、以前財布を盗んだ男の裁判があって、同じように盗った財布かどうかを聞かれてわかんないって答えたんですね。捨てちゃったから。
欲しいのは財布じゃなくて、財布の中の金銭だからね。財布がかっこよかったりすると、それすらも自分のものにしたりもするかもしれないけどね。
でも財布ですらそれなんだから、盗ったハンガーを詳細に記憶しているとはちょっと……。
ってか、たぶん被害者もわかんねぇよ
では、被告人質問。

弁「まず、自転車の窃盗だけど、どうして盗んじゃったのかな?」
被「本を読みに図書館に行ったんですけど、休館日で閉まっていまして怒って盗りました」
弁「怒って盗るってどういうことよ?足代わりに使おうとか思ってたんじゃないの?」
被「はい、まぁそんなところです」
弁「はい、そうですね。その後、あなたは盗んだ自転車で走り出し……」

尾崎っぽく言わないでください。
僕だけか?そんな風に思ったのは。こじつけですね、ごめんなさい。

弁「盗んだ自転車で走り出し、サウナに行こうと思いましたね?」
被「はい、その前の晩から朝にかけてがとても寒かったので、暖をとろうと思いまして
弁「それで、行ったんですか?」
被「いえ、サウナも休館日で閉まっていました」

松戸市!!被告人がかわいそうだよ。
図書館行ったのだって、本を読みたいのもあったと思うけど、暖かい施設内でのんびりしたかったんじゃないの?
まぁ別に図書館は暖をとる施設じゃないですけど、さすがにこの寒さですからねホームレス生活というのは、もはやかわいそうという言葉じゃ片づけられないですよ。

弁「あなた、アパートのベランダに登って、Yシャツを2枚盗んでますよね?自転車で走っていてYシャツが見えたのですか?」
被「はい。道路の結構近くにあったものですから」
弁「どうして、盗もうと思ったの?」
被「昨晩の寒さを思い出してしまいまして

よっぽど寒かったんだね。
盗まれた方にとっては失礼な表現かなと思いますけど、被告人にとっては運悪くYシャツしか干してなかったわけじゃないですか。
はっきり言ってYシャツじゃ、寒さは凌げないですよ。少しでもと思ったのか、盗ったのは2枚。さらには、事件時刻は朝10時とかですから、ほとんど乾いてなかったと思いますよ。
それでも盗っちゃうんです
やはり、こういうの聞いちゃうと、ホームレス生活の辛さが伝わってきます。
しかもこの事件、10月に起きてるんです。まだ、これから冬は長いです。
それでも盗っちゃうんです。

弁「あなた、裁判を受けるのは今回が初めてですよね?」
被「はい、そうです」
弁「何を考えていますか?」
被「とても反省をし、もう2度と犯罪は起こしたくないです」
弁「留置所も初めて入りましたよね?留置所生活はどうでしたか?」
被「もう2度と入りたくないです
弁「野宿と留置所どちらがきついですか?」
被「……野宿です」

これ、そうなんだよね。
いや、本当は弁護士としては、「留置所です」と答えてもらって、だから被告人は初犯ってこともありますし、留置所の辛さも知りました。だから、再犯の恐れは低いと思いま〜すってしたかったのに、野宿って言ったらダメだろって突っ込みももちろん可能ですよ、可能なんですけど。
以前も、「刑務所は温かい」発言をした被告人がいましたけど、犯罪は反省している(?)んです、留置所生活は嫌なんです。
それでも盗っちゃうんです
野宿の方がもっと辛いんです。
まぁ、それで被害者の方が納得するわけないですけど。
犯罪者やホームレスに税金を使って養うのはどうなのか、という意見をよく出す人がいます。確かに、それは至極まっとうな意見だとは思います。
でもね、そうもいかないんですよ。
ホームレスになってしまった人の原因って様々で、自業自得的な人もいれば、会社が倒産してしまってあーだこーだみたいな人もいます。
もしもの時を思って、ちゃんと貯蓄をして……とかできりゃそりゃあいいんでしょうけど、世の中の人みんながそういうことに利口であるわけではありません。不慮の事故に遭う方もいらっしゃいます。
こういうの、どうにかならないんですかね〜?


あれ?
こんな真面目な話にするつもりなかったのになぁ……。

最後に検察官が求刑懲役一年六月を求めました。
その理由として、

  • 再犯の可能性はおおいにある。
  • 犯行は計画的であり、凶悪である。

とのこと。
確かに犯罪行為自体は悪だと思いますけど、少なくともこの人の場合、凶悪とは言えないと思うけどなぁ……。