「裁判官の爆笑お言葉集」

風の吹くまま、気の向くまま
何を読むかは賽の目次第
裁判博徒の看板背負って
歩いてみせます読書の天地
題して


The Book Review


今回、紹介する作品は、
長嶺超輝裁判官の爆笑お言葉集」(幻冬舎 720円+税)

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)


内容Amazonより):
『「死刑はやむを得ないが、私としては、君には出来るだけ長く生きてもらいたい」(死刑判決言い渡しの後で)。
裁判官は無味乾燥な判決文を読み上げるだけ、と思っていたら大間違い。ダジャレあり、ツッコミあり、説教あり。
スピーディーに一件でも多く判決を出すことが評価される世界で、六法全書を脇におき、出世も顧みず語り始める裁判官がいる。
本書は法廷での個性あふれる肉声を集めた本邦初の語録集。これを読めば裁判員になるのも待ち遠しい!』


著者、長嶺超輝Amazonより):
一九七五年長崎県生まれ。
九州大学法学部を卒業後、弁護士を目指し、塾講師や家庭教師の指導と並行して司法試験を受験。七回の不合格を重ねて懲りる。
現在はライター業の合間をぬって裁判傍聴に通う日々。二〇〇五年の最高裁判所裁判官国民審査では、対象となった裁判官六名の経歴や過去の発言、判決骨子をまとめたサイト「忘れられた一票」が各方面で大きな反響を呼ぶ。


ということで、レビューは「続きを読む」からどうぞ。


というわけで、僕「普通」がラジオDJを気取って、僕の勝手な価値観のもとギャーギャー騒ぐ型書籍評論コーナー「The Book Review」の第一回でございます。
第一回に取り上げるのは、冒頭でも申しましたとおり「裁判官の爆笑お言葉集」という作品。
この本、いわゆる裁判関連の書籍の中で、最も売れている本の一つでして、買った本の帯にも「10万部突破!」の文字が躍っていますし、どうやらすでに30万部突破との話も。
Amazonのレビューを見ても全62件のレビュー数にも驚くんですけど、その中で星1つ、星2つ、いわゆる低評価がそれぞれ1件ずつしかないなど内容でも高い評価を得ています。
そんなわけで、ほめるなら流れに乗りやすく、けなすなら非常にハードルが高い作品をよりによってコーナーの一回目にもってきてしまいました……。


本文の構成は、見開き右ページに今回のメインテーマである裁判官の言葉とそれを言った状況についての記述。
左ページは、著者による解説になっています。
こんな感じ。

わかりづらいですかね……。
まぁ、中身が気になる方はね、これから僕が読んだ感想を言っていくんで、読みたくなったらご自分で読まれたらいいし、興味がなければ忘れてください。


さて、さっそくレビューに移っていくんですけど、最近の傾向というのかね、タイトルが非常に凝っているのが多い
まぁ先駆的なところで言うと、「さおだけ屋はなぜ潰れないのか」(光文社)なんてのもありましたね。
正直、僕は今回の作品、このタイトルを見て、これは素晴らしいと思って即買いした人間でございまして……。
でね、この作品以外にも最近タイトル買いした商品があるんですね。
具体的には「女房を質に入れるといくらになるのか?」(扶桑社)、「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」(文藝春秋)とかね。
で、これらはタイトルに興味を持って買ったわけなんだけど、中身ではタイトルについてなんてほんのちょこっと扱ってるだけなんです。
タイトルなんて、消費者の手に取らせるまでのものなんで、それはそういうものだと思ってしまえばなんともないんです。


でも、多少はね、読者としてはタイトル通りの中身を期待するし、直近に挙げた2つは多少はタイトルに触れてくれているんです。
ただ、はっきり言いましょう。
今回の作品、




爆笑できる言葉は一切ないです!


さぁ、一回目にしてすでに暗雲立ち込めてきた「The Book Review」ですけども、まぁもちろんね、笑うツボなんてものは人それぞれだって言ってしまえばそれまでなんですけども、面白いという人がいるなら、どこで笑ったんですか?と逆に問いたい。
もし、どうしても、どうしてもよ、天地天命に誓ってもクスリとも笑えるフレーズがないのかと聞かれたら、これは一つしかないんですよ。


「刑務所に入りたいのなら、放火のような


重大な犯罪じゃなくて、窃盗とか他にも……。」


裁判官が窃盗を推奨しちゃっている、放火は重大だけど窃盗は重大ではないとか言ってる、このフレーズは確かに少し面白いですよ。
でも、これ一つでタイトルに爆笑とつけるのは、ちょっとひどいですし、これに対しての著者のコメントも別に普通で、笑わせようと考えているとは到底思えないんですよ。


これは、著者に言ってるんじゃなくて、出版社に言っているのね。
というのも、51ページの作者の文章を引用すると、


裁判官の気になる発言を集めた本である以上、……(以下、略)


「気になる発言を集めた」とか言っちゃってるでしょ。
だから、たぶん執筆の段階で著者は、こんなタイトルになるってわかってなかったんだと思うんだよ。
別にね、さすがに本の中身全部が爆笑お言葉で固められているとは思っていなかったけども、タイトルで爆笑とか謳っている以上は、最低限の義務として爆笑だけを集めた章を作るとか、例えそれが滑っているとしても、どうこの発言面白くない?って形に持っていかなきゃダメなんじゃないのかなぁ……。
だったらですよ、自画自賛のような形で大変みっともないですけど、僕の前のブログから生まれた裁判官のお言葉、


プリーズストップミー



「なんとも皮肉なものですね。


いわゆる結婚詐欺師が、結婚を機に更生を誓うなんて」


これも入れてくださいよ。
申し訳ないですけど、この本に載っているお言葉に比べればこっちの方が面白かったと思いますよ。
自己推薦なんてみっともないことしてごめんなさいね。
ただ、そもそもが、


死刑はやむを得ないが、私としては、


君には出来るだけ長く生きてもらいたい


これがね、爆笑お言葉って銘打ってる書籍の内容紹介に出てくる言葉としては、どう考えてもおかしいと思うんだよね。
このタイトルでいったら、「裁判官の人情お言葉集」とかがいいんじゃねぇの?とか思ってたら、あるのね既に。

裁判官の人情お言葉集 (幻冬舎新書)

裁判官の人情お言葉集 (幻冬舎新書)

まぁでも、人情お言葉集ってタイトルじゃここまで売れなかったとは思うけどね。
それについては、後述しますけど。


で、ここまではタイトルと内容の合致していないことについて不満をタラタラと流してきたんですけど、では、肝心な中身そのものについてはどうなのかと言いますと……。
さっきから再三再四言っている通り、爆笑できるお言葉はないですけれども、いい言葉でしたり、犯罪を犯した人に対し厳しく罰する言葉、思わず同情してしまう言葉など中身そのものについては決して否定はできないというのが正直な感想。
裁判がクローズアップされたのってここ数年ってこともあるんで、裁判を取り上げている本の著者が得体の知れない人だったりすることが本当に多くて、こんな適当なブログやってる僕に言われたくないでしょうけど、読んでて正直辛いものも多いんですよ。
そういう意味でこの著者は、僕はよく知りませんけど、もともとライターのお仕事をされている方だそうで、この分野の書籍にしては非常に文章も読みやすく、クセもないので好感は持てます


ただねぇ、こういう企画なんで仕方ないといえばそれまでなんですけれども、正直途中でダレちゃうんですよね。
本文自体は200ページ強で、全く長くないし、文章もスイスイと進むんだけど、言葉の延々羅列って部分があるので途中でヤマを持ってこれないんだよね。
まぁ、それで途中にコラムとか入れて頭を切り替えさせようと趣向はわかるんだけどね。


で、最後に僕が一番気になったことを言うんですけども。
裁判関連の書籍で一つ大きな役割を持っていなきゃいけない部分というのが、もちろん法律に関しての正しい知識というのもあるけど、裁判って別にドラマのように激しい言葉が飛び交うわけでもないし、意外と親しみやすいものなんだよっていうのを裁判って何?って人に伝えるってのも大事な役割だと思っているんですね。
そこでさっきのタイトルの話に戻るんだけど、タイトルに「爆笑」ってついているだけで裁判=爆笑とは普通の人は想像できないから、完全にイメージをぶっ壊しているんで秀逸なタイトルだと思ったんですよ。
そういう意味で考えると、次回作である「人情」お言葉だったり、途中裁判官が被告人に対して厳しいことや同情してしまうような言葉を言うってこと自体は、ある程度、普通の人にとっても想像の範囲内なんじゃないかなと思うんですよ。
つまり、目新しさがないのではないかということ。
だからこそ、内容部分に爆笑要素が薄かったので、別に文章の構成自体はいいんだけど、残念に思ってしまったんです。


ただ、僕は正直、世間一般の人の中では裁判所に足を運んでいるほうだと思うので、そういった感覚になってしまうのかなとも思います。
ですから、僕はほかの方がさっき言ったところをどう思うかの感想を聞いてみたいと思いますし、まぁここまでよく言葉だけで集めたなという賞賛の意味も込めまして、


お薦めです


(↑これは毎回、良作はもちろん駄作でも言うことにします)
さて、だいぶ生意気に書いてしまいましたが、許してくださいね。
というわけで、次回に読む6つの賽の目作品です。


1枠.かなざわいっせい「すごい裁判官・検察官ベスト30―東京地裁で3000回傍聴している私が選ぶ 弁護士もイケてます」
これね、すでに読んでいるんですけど、正直ここでは取り上げたくないかなぁ……。
なぜなら、僕だってブログの場で口汚く罵りたくはないですからね……。


2枠. 久保内統「あなたも裁判員―漫画で読む裁判員制度
2回連続の選出ですね。
これはね、やっぱ気にはなっているんで近々入手してみたいです。


3枠. 長嶺超輝「裁判官の人情お言葉集」
来ましたね、さっそく。
う〜ん、でもこれやらなくてもいいんじゃないか?
今回の作品で、先が見えてる気もしなくもないんですけど……。


4枠. 元榮太一郎「刑事と民事―こっそり知りたい裁判・法律の超基礎知識」
これ面白そうですね。
僕だって、裁判を見てるだけで基本的に法律に関しては全くの素人ですからね、結構タメになりそうじゃないですか。


5枠. 木村晋介「激論!「裁判員」問題」
これ知らなかったんですけどね、内容紹介見る限りでは面白そうだと思いました。
裁判員制度ってなんか否定的な意見が表に出過ぎな感もあるんで、激論って言うからには賛成派と反対派の意見が聞けるってことなんでしょうね。


最後の枠は今後、僕が気になっている作品をその回ごとに入れることにします。
6枠.産経新聞社会部取材班「男はなぜパンツ一丁で郵便局に押し入ったのか トンデモ裁判傍聴レポート」
これね、書店で見つけてすごい気になってるんですよ。
まぁレビューに選ばれなくても、絶対に近々読むとは思うんですけどね。


さぁ、6作品揃ったところで


Let’sサイコロTime!!


ドキドキ
ドキドキ


6枠〜。
2回連続で6枠が出てしまいましたが、産経新聞社会部取材班「男はなぜパンツ一丁で郵便局に押し入ったのか トンデモ裁判傍聴レポート」を読んでみま〜す。

男はなぜパンツ一丁で郵便局に押し入ったのか トンデモ裁判傍聴レポート

男はなぜパンツ一丁で郵便局に押し入ったのか トンデモ裁判傍聴レポート

次回こそは、皆様に心からお薦めできる本でありますように……。