「罪と罰の事典-「裁判員時代」の法律ガイド」

風の吹くまま、気の向くまま 何を読むかは賽の目次第 裁判博徒の看板背負って 歩いてみせます読書の天地 題して The Book Review 今回、紹介する作品は、 長嶺超輝、「罪と罰の事典-「裁判員時代」の法律ガイド」(小学館 税込み1,890円)
罪と罰の事典-「裁判員時代」の法律ガイド

罪と罰の事典-「裁判員時代」の法律ガイド

内容Amazonより): 新聞記事やニュースが全国各地で起こった犯罪について伝えない日はありません。でも、自分だけは犯罪とは無縁だ、というのが多くの人々の感覚でしょう。 しかし、実際は誰もがさまざまな形で犯罪と無縁ではありえません。また、いよいよ裁判員制度の開始も近づき、裁判への関心も日増しに高まってきています。 そこで本書では、「○○罪」「○○法違反」といったことが、どのような犯罪で、どのように処罰されるのか、難しい概念をやさしく解きほぐしつつ、ていねいに解説しました。 ひと目でわかる「法定刑グラフ」、さまざまな事例を取り上げたQ&Aなど、多くの工夫を盛りこんだ、法律の世界に無理なく親しむことのできる事典です。 著者: 最初のこのコーナーで取り上げた「裁判官の爆笑お言葉集」と同じ作者さん。 と、いうことでレビューは「続きを読む」からどうぞ。 さて、けなすときは活き活きとペンが進むのに、いざ褒めるとなるとうまく言い表せなくなっちゃう「ツンデレ」型書籍評論コーナー「The Book Review」です。 今回、読みましたのは冒頭でも言ったとおり、「罪と罰の事典-「裁判員時代」の法律ガイド」という作品でございます。 このコーナーで取り扱う書籍は、今回の作品で6作目になります。読んでよかったなと思えた本もありましたが、読んだ時間をそっくりそのまま睡眠時間として返してくれ!と叫びたくなる本も読みました。 でも、このコーナーでは、最後は「お薦めです」という言葉で締めるようにしてきました。それは、読んでくださっている方が僕みたいな格段読書家でもなく、法律家でもない人間の感想に縛られてほしくないという気持ちと、こっちで勝手にサイコロ振って読んでおいて、けなすだけというのも気が引けたからです。 しかし、あえて言わせていただきますよ、今回の作品 全くお薦めできません!!一般の人には) 一般の人にはね。 ただ、少しでも法律に興味がある勉強する気がある裁判を傍聴したことがあるなどの人たちは 全員、読んでいい本です!! 僕ねぇ、ものすごく楽しませていただきましたよ。まだ2009年3月を終えたばかりですが、僕の中で毎年やってる「今年、読んでよかった本ベスト5」には確実に食い込んでくるでしょうね。 ただ、さっきも言ったとおり、特に法律に触れていない人は別に読まなくてもいいんじゃないのかなぁ……。裁判員制度と関係あるわけでもないし。 結局、この本ね、内容紹介にも書いてあるんですけど、いろいろな犯罪名を紹介して具体的にどのような行為を指すのか、どういった刑になるのかを紹介していくのね。 もちろん、ニュースで最も取り上げられるような「殺人罪」「覚せい剤取り締まり法違反」なんかも紹介しているよ、でも大半がニュースだけでは知り得ないものばかりだから、やさしく説明しているのはわかるんだけど、元来法律に興味に触れてこなかった人が知らない罪名を聞いてどこまで集中力を持続できるのかというのは疑問が残る。 「占有離脱物横領」という罪名を聞いたことある人はあまり多くないと思うし、この罪名を聞いてどれだけの人がどんな罪なのか興味を持つかはわからないよ。でも、この罪が放置自転車を持ち去る行為(窃チャの一種)と聞けば興味はわくでしょ?つまり、法律に親しんでもらいたいのであれば、 >> -「占有離脱物横領」→自転車泥棒の一種 といった紹介の仕方じゃなく -自転車泥棒→「占有離脱物横領」(放置自転車じゃなきゃ「窃盗」) << という逆引き的な方法でも良かったのかもなぁって。まぁ、この方式だと、100倍くらい具体例用意しなきゃいけないから実質的に無理だろうけどね。 そういう興味の持続という点を除けば、この本における法律の一般生活への置き換えは面白すぎる。 例えば、人の靴を隠したら窃盗じゃなくて「器物損壊」になりうるとか、動物を殺したら「器物損壊」ってのは有名だけど、妊娠12週以上の中絶された胎児を遺棄すれば「死体遺棄罪」で、12週未満だと「廃棄物処理法違反」だなんて、誰が知ってる?この本をコンプリートしたら、クイズミリオネアの250万円級の問題は簡単に作れちゃいますよ。 あと、たまにニュースで家で飼っていたサソリが逃げて地域住民大騒ぎなんてのもありますよね。これって動物の愛護及び管理に関する法律違反」ってのらしいんですけど、じゃあ都道府県知事の許可を受けなかったら、具体的に何を飼ってはいけないのか気になるじゃん。安心して、ちゃんとこの本では具体例を載せてくれてるから。 >> ほ乳類……チンパンジー・オランウータン・ゴリラ・マンドリル・(中略)・ジャッカル類・ハイエナ・(中略)・クマ・ゾウ・サイ・カバ・キリンなど。(139ページ) << ジャッカルって……。「どうぶつ奇想天外」くらいでしか聞いたことない動物のオンパレード。実際、飼ってる人なんているんですかね……?そういえば、人にクマを飼うのを薦めているのがいたな。2:30あたりからね。 ちゃんと、許可をとってから飼って下さいね。 この本で、一つだけ気になったというか、僕は好まなかったのは、ホームページでよくQ&Aコーナーってあるじゃないですか。僕の卒業した大学のバレーボール部のHPにもQ&Aコーナーがあるんだけど、 >> Q.アルバイトはできますか? A.はい。部員の大半はアルバイトをしていますから大丈夫です! << みたいな、完全な自作自演ね。別に自作自演はいいんだけどさ、 >> Q8「あのコのハートを盗んだら、オレは恋泥棒ですか?」 A「窃盗罪には問われませんが、罪な野郎だなと、うらやましく思います」(46ページ) << 何言ってるの?って思ったり、 >> Q9「ワラビやゼンマイを摘んでいると、春の訪れを感じます。たくさん摘んで帰って近所におすそ分けします。あたしって、つきあい上手。」(52ページ) << これ、もはや質問じゃないでしょ?このオバサンが仮に実在するとしたら、宛先違いますよって言ってあげなきゃ。でも考えてみると、この同じ著者で以前扱った、
裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)

裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)

この本でも、あ、そういえばこの人こういう類のことを面白いと思う人だったわと思う一方で、前回扱った作品と同様にしっかりとした調べのもと詳細にかつわかりやすく書いているのも、この人の特徴なんだなぁ、と感心したり。 まぁ、なんか気になったのこれくらいかな。ほかにも紹介したい罪状はたくさんあるんだよ。人のクローンを作っちゃダメだとか、本当にいろいろとあるんだから。だから、今回の記事を読んでいただいた方で、少しでも面白そうだなと思ったすべての方には、 お薦めです!! ちなみに、前回の最後に値段がちょっと……みたいなこと書いたんだけど、400ページ弱、この内容で1,890円は断然買いだと思います。 さて、テンションも上がってきたところで、次回の課題作品を決める賽の目です。 1枠. 郷田マモラ「サマヨイザクラ(上下)」 来た〜。前回は推薦枠でしたけど、今回は通常選出されました。なんと、5月に単発でドラマ化もされるそうで、注目度は高まりそうですね。 2枠. 石川多加子「『あなたは死刑を宣告できますか』―憲法違反の裁判員制度を断罪する」 なかなか衝撃的なタイトルですね。裁判員制度って憲法違反なの?ここまで、はっきり書いちゃって大丈夫なんでしょうか。 3枠. 門田隆将「なぜ君は絶望と闘えたのか」
なぜ君は絶望と闘えたのか

なぜ君は絶望と闘えたのか

これも、そのうちには読まなきゃいけないんでしょうね。山口県光市の母子殺害事件の本村さんを追いかけた話ですね。有名事件の裁判ってね、裁判員制度でマスコミがどう影響してくるのかって問題もあるし、読んで損はないのかな。 4枠. 元榮太一郎「刑事と民事―こっそり知りたい裁判・法律の超基礎知識」 これも読みたいのよ。特に、今回、結構法律のかっちりしたもの読んだから、法律の知識欲がバンバン湧いてるからね。 5枠. 平墳雅弘「日本初「子ども裁判」の実践―いじめ解決から裁判員制度まで」 これも読みたいんです。書店で軽く立ち読みはしたんだけどね。裁判員制度とはあんま関係なさそうなんだけど、裁判と名のつくものには敏感に反応してしまう24歳です。 自己推薦枠の6枠. 井上薫「それでも裁判員、やりますか?」
それでも裁判員、やりますか? (SHUEISHA PB SERIES)

それでも裁判員、やりますか? (SHUEISHA PB SERIES)

  • 作者:井上 薫
  • 発売日: 2009/03/26
  • メディア: ペーパーバック
前回、コメントを下さった「ahr666generation」さんが読まれたというこの作品、推薦枠にねじ込んでみました。もし、他の方も読まれた書籍があれば紹介してくださいね。 さぁ、6枠揃いました。今回は、どれに当たってもいいぞ。 では、さっそく参りましょう、 Let’sサイコロTime!! ドキドキ ドキドキ 1枠〜、やったー、サマヨイザクラ!!これは、2回連続で当たりじゃないのか。 というわけで、次回はサマヨイザクラの上下巻を読んでいきま〜す。