テンションを上げる男

裁判No.7

事件:「窃盗」 概要)車の窃盗

    「道路交通法違反」 概要酒気帯び運転

被告人:50代前半の男性

傍聴席:1人

裁判の中身は「続きを読む」からどうぞ。

どうも皆さん、おはようございます、こんにちは、こんばんは「普通」です。

今回もはりきって参りましょう。

今回のようにタグに〔改訂〕とついていたら、前々回のブログ「傍聴.net」で投稿した記事の改訂版となります。

結構、自分の中でも気に入っていた記事、裁判もあるし、今もたいして変わりませんけど前はもっと文章がひどかったんでノートを見返して書き直そうかなと。

よく言えばリサイクル、悪く言えば新着ネタが減るのを防ぐための箸休め……。

改訂版一回目に持ってきたのは、僕が初めて傍聴した裁判

初めてって何ごとでも緊張するものだけど、僕って無神経というかなんというかで、初めてにして一人ですたこらさっさと裁判所に向かったことは今でも覚えています。

まぁ傍聴している方のブログを見たり、裁判傍聴界では知らない人はいないと言っていい阿曽山大噴火という人が出演しているラジオを聞いてたりしたんで、超完全無知から産毛がちょろっと生えてるくらいの知識はあったけど、聞くとやってみるのとではやはり大違い。

最寄り駅を出て、裁判所の入り口で、裁判関係者用入口と一般の人用の入口でうろちょろし、入口入ったらすぐ荷物検査を受け、空港にあるような金属探知器みたいなゲートをくぐり、目の前にあるその日の公判予定表を必死にメモる。

いろいろ事件はあったけど、やっぱり選んでしまうのは今も昔も「窃盗」の事件。

13時ちょうどの開廷だったのに、早く行って悪いことはないだろと12時半には法廷の前へ行き、ドアをがちゃがちゃやるも、まだカギがかかっていて中に入れない。

周りに人もいなくてシーンとしてたから、本当にここで合ってるのか?ってか、そもそも僕はここにいてもいいものなのか?など不安に陥りながらも近くの待合室で一人ぽつんと待つ。

ここにも人がいないから、頭の中では裁判に対する期待と不安が交錯。

なんか物音がする度に、もう法廷開いたかな?といちいち確認する傍聴童貞臭を辺りにふんだんに撒き散らしていたら、ようやく法廷のカギが開きました。

法廷に入ると、弁護士と検察官はまだいなくて、いるのは書記官のみ。

裁判は誰でも見れると聞いてはいたものの、初めてで気持ちが不安なせいか、その書記官が、なんでお前ここにいるんだよ?と言いたげな目で睨んでいるような被害妄想に陥っちゃうのね。

ただ、特に何も言われないんだから、まぁ大丈夫なんだろうよということで、意味もなく書記官にぺこりと会釈だけして傍聴席に着席。

で、運がいいのか悪いのか、ほかに誰も傍聴人がいなかったのね。

裁判長が入廷するとき、書記官が「起立」って言うと法廷内にいる人、全員が立たなきゃいけないんだけど、傍聴人も立つものなのかわからないし、他の傍聴人もいないから迷ったんだけど、まぁ人間として挨拶くらいしたって問題ないだろということで、僕も起立して礼をすると、これが正解でございまして。

そんで、ようやく裁判が始まるんですね。

ちなみに、↓の写真はその時のメモの一部ね。

どうでもいいですね。

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被告人は50代の男性。

被告人は、酒を飲んだ状態でカギが刺さったままの車を探して、それを盗んで(窃盗)、運転した(道路交通法違反)疑い。

被告人は、窃盗の前科2犯を持っています。

刑務所から出たはいいものの、被告人には住む家もなく、寮が備わっている仕事場を探していました。

そんなこんなで、前々から技術があったことも手伝ってか無事に建設系の会社に勤めることができました。

しかし、日当6,000円が少ないと感じたことと、職場の人間関係が嫌になってしまい、僅か数ヶ月で寮を逃げ出してしまいます。

僅かな手持ちで数日は過ごせましたが、やはり職場に戻ろうと決意します。

でも、一度逃げ出した場所に戻るのには勇気が必要と思い、よし景気づけだ!と言ったかは知りませんけど、駅の近くのコンビニでワンカップの日本酒を2本購入して、その場で2本飲酒

あれあれ?

電車に乗った後、また不安になった被告人は途中下車して、また駅近くのコンビニで、またもワンカップを2本購入して、今度は1本だけ飲酒

あれあれ?おかしいぞ。

すると、この時点で手持ちが500円前後になってしまったことから、親戚にお金を借りに行こうと思い立ちます。

ちなみに、この時、被告人は埼玉県朝霞市にいました。

目指していた会社は東京都板橋区にありましたので、恐らく東武東上線に乗っていたのではないかと推測が立ちます。

たぶん、500円あれば板橋くらいなら足りるんですけど、まぁ無事に会社に戻ってもお金がないことを気にしたんですかね、親戚の家に行く決心したわけですけど……、その親戚は茨城県に住んでるんですよ。

たぶん500円じゃ行けないじゃん、たぶん埼玉から茨城へと横へ走る電車もないと思うし。

ですんで、被告人は車を窃盗して、酔っぱらった状態で運転をしてしまったと。

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あ〜なるほどね!だから酔っぱらった状態で、車盗んで運転しちゃったんだ!……とは裁判初心者の僕はならないですよ、今だってなりませんよ。

もうね、裁判ってこんな人ばかりなの?ってただただ唖然。

ほげ〜とか言いながら見てましたよ。

そんでもって、被告人質問。

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弁「被告人は現在、住居不定ということですが、ご家族はどうされました?」

被「父は25年前に亡くなりまして、母は足が悪くて自分一人ではロクに外出もできないんです」

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これは、弁護の方法としてはよくあることで、家族が病に伏していたり、体に不自由なことがあったりすると、被告人を頼りにしている人がいるから刑を軽減してくれと裁判官に訴えかけるわけですね。

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弁「今、そのお母さんと住んでいるのは?」

被「長女である姉です。でも、姉も最近直腸がんだということがわかりまして、今後入院したりすると思うんです……」

弁「ほかにも住んでる人いますよね」

被「はい、次女が住んでいます」

弁「その人は?」

被「妹です」

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……

……

あ、それだけ?

健康でなによりです。

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弁「お兄さんもいますよね?」

被「はい、宮崎県庁で働いています」

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それ聞いてどうしたかったんだよ弁護士。

まさか、宮崎で働いている人に被告人の更生・監督を任せようと思ったの?

この裁判やってた頃はともかく、今や宮崎は大人気ですからね、こんな酔っぱらいどころじゃないですよ。

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弁「高校卒業後の専門学校では何を学んでいたのですか?」

被「建築の技術を学んでいました」

弁「あなたが働いていた会社も、その技術を活かせる会社だったのですか?」

被「はい、そうです」

弁「じゃあ、どうして仕事辞めちゃったの?」

被「1日の賃金が安いのと、私が仕事をしっかりすることもあってかよく妬まれるんです。それで、人間関係が悪くなって……」

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前半の「私が仕事を〜」はカットでお願いします。

自称の仕事をしっかりするということで、裁判長の心証をよくしようと考えたのでしょうか?

少なくとも、僕の心証には悪影響を与えました。

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弁「職場に向かうための駅の途中で、お酒を買って飲んでいますね。これは、なぜですか?」

被「職場に、戻るために自分を高ぶらせようと思いまして

弁「なるほど。それで、あなた、職場の最寄り駅の近くでもお酒を購入していますね。これはなぜですか?」

被「これも、同じ理由です。自分を高ぶらせるためです」

弁「あなたは、この時にお酒を1本しか飲まず、1本は残してますね。これは、なぜですか?」

被「その1本を飲んだらダメになると。職場に戻らなきゃいけないので、そこは抑制しました

弁「なるほど、ではあなたは職場に戻りたいという意思がはっきりと勝っていたと」

被「はい、そうです。その辺りの分別はしっかりしていましたから

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もう突っ込むのすらダルいですよ。

最悪ね、気持ちを高ぶらせるためにお酒をあおるというのを認めたとしますよ。

でも、2本飲まないでしょ、まず。

次にお酒を飲むとき、わざわざ電車を降りています。

それ、アルコール切れちゃったんでしょ?

1本残したのは、職場に戻るための抑制とか言ってるけど、単にダメになる寸前だったんでしょ?

そして、検察官が1つだけ質問をしました。

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検「あなた、さっき4本目のお酒を飲まなかったのは、職場に復帰するために気を高ぶらせるためだ、自分には分別があったと言ってましたよね。でも、実際は職場に戻りませんでしたよね?それは、どうしてですか?

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検察官の王手!それに対する、被告人の受けは?

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被「それは、まぁお酒を飲んで気持よくなっちゃって、

なんだかどうでもよくなっちゃったんですよね

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あ〜まだ逃げ道あったのに、自分から詰んじゃった……。

この人、さっきまでやっていた弁護士からの質問の意図を理解していたのかな?

そりゃあ、自分の弁護のために適当な答えをしろとは言いませんけど、右向けと言われれば右、左向けと言われれば左を向くような答えしか出せない被告人を裁判長はどうやって信用したらいいんでしょうか。

まぁね、僕の周りにだっていい加減な人たくさんいますよ。

でも、罪を裁かれている裁判という場、ってかそもそも罪となっている事象、これらすべてがこの歳の人がやることなのかと、裁判初心者の僕には刺激が強すぎて、がっちり心掴まれちゃったんですね。

懐かしいなぁ、もう約3年前の話か……。

この人、この3年間の間にまた裁判とかかけられていないか、それだけが心配だなぁ……。